軽量小型自動車の開発には、コンピューター支援の強力な最適化戦略によってサポートされる革新的なデザインコンセプトが必要となります。この記事の中では、ドイツのRuesselsheimにあるOPEL社のInternational Technical Development CenterのプロジェクトエンジニアであるAxel Schumacher博士により、複合分野にまたがる最適化問題を定義する際に提起された問題点のいくつかが紹介され、また、それらの問題点に対応できたアプリケーションについて説明されています。
Axel博士は次のように語っています。「コンピューター支援の最適化システムが配置されるまでは、私たちが達成しようとしているものが正確に何であるかを一生懸命調べました。私たちは、様々なシミュレーション方式の間のやりとりだけでなく、開発プロセスにたずさわる色々な人々とのやりとりを調べました。最適化の手順は、日常業務の中で、様々な分野のエンジニア(静的解析や衝突シミュレーションなど)に役立つものでなければなりません。この最適化システムには、以下のニーズが要求されました。すなわち、私たちが作成したプログラムや作業手順の多くに対してオープンであること、異なるスキルを持った人々が使えること、1つのDOE方式が選択でき、必要に応じて当社のデザイン・チームのメンバー以外も利用できること、および現実的な計算リソースを使用して実用的な時間内に結果を収束できることなどでした。LMS OPTIMUSがこれらのニーズに対応するために採用され、現在はOPEL社で幅広く利用されています。このソフトウェアインフラストラクチャーを適切に利用することにより、私たちは複合分野にまだたる最適化問題を解決するためのプロセス経路マップの開発を始めることができました。」
複合分野にまたがる最適化の問題の定義付け
まず、いくつかの部門や分野が関係する大規模なプロジェクトに取り組む場合、最適化問題を詳細にわたって定義することが要求されます。構造(デザイン変数)、コンポーネントの目標関数および制約関数についての要求、およびロード・ケース(解析モデル)に対して利用できる変形の可能性を、仕様リストに書き込んでいくことが必要です。
選択したデザイン変数の選択は、コンポーネントの最適化に相当な影響を与えます。したがって、以下の質問に答える必要があります。
コンポーネントモデルのどのパラメータが変更可能か
どの構造エレメントがシステムの振る舞いに強・中・弱の影響を与えるか
最適化ループにおいて変化する可能性があるデザイン変数はどれか
コンポーネントの要件を、目的関数および制約関数の助けを借りて定義します。それには、以下の質問に答える必要があります。
最適化の目的は何か
どの目的関数と制約関数を定義するか
その目標と制限をパラメータ化できるか
変数についてデザインの制約の一貫性を考慮して変数の感度を決定できるか
もちろん、構造有限要素モデルが最適化プロセスに含まれることは共通しています。しかし、複合分野にまたがる最適化を完全に行う場合、フロー計算、疲労計算、製品シミュレーションなどを行う為の手順も統合する必要があります。また、材料データとそのロード・ケースも考慮する必要があります。
フレーム・サイド・レールの複合分野にまたがる最適化
自動車のサイド・レールは、正面衝突と静的挙動の両方に対して安全認可要件を満たさなければなりません。衝突時のパフォーマンスは、詳細な有限要素プログラムLS-DYNAを使ってモデリングされます。一方、静的解析には有限要素プログラムMSC NASTRANを使用します。構造は同じですが、構造最適化ループでは各シミュレーションにそれぞれ固有のモデルの記述と入力用デッキがあり、デザイン変数は、4つのフレーム・サイド・レールの壁の厚さです。そして目標は、正面衝突における慣性エネルギー(F)を最大にすることであり、制約条件は以下の様になります(アルミニューム材を使用した場合)。
- 正面衝突(G1)における変形距離は300mm未満
- Masフレーム・サイド・レール(G2)の重量は2.5kg未満
- トーション・ロード・ケース(G3)の変形は2.4mm未満
OPTIMUSで達成できた最適化の結果を上表に示しています。1回目の計算ではG3になんら制約も設けませんでしたが、2回目は完全な最適化計算を行いました。これにより、目標値を最大にしても全ての制約条件を満足できることが証明されました(DYNA解析を41回とNASTRAN解析を41回利用)
ルーフの破壊抗力の最適化
OPELでの使用経験から、20万要素以上の大規模な有限要素モデルを必要とするアプリケーションでもOPTIMUSを利用して効率的に作業を行う事ができることがわかりました。このことを、ルーフの破壊抗力について以下の例を用いて説明します。この例での最適化目標は、構造重量を上げずに最大抗力を高める事にあります。また、抗力が最大に達した後での抗力の低下は20%以内に収まっていることが必要です。シミュレーション時間を短縮するために、最適化ではLMS-DYNAの走行回数をできるだけ少なくして最適化を行いました。ルーフの破壊に影響すると考えられる8種類のパネル(外側ピラーa、ルーフ・フレーム・サイド、および前面サイド・パネル)だけがデザイン変数として選ばれました。23回の衝突シミュレーションをもとに行った最適化により、重量を上げずに最大抵抗力を11%上げることができました。
パラメータ化CADモデルを利用した形状最適化
この演習の基本的な目的は、最適化ループで利用される、パラメータ化されたUniGraphics CADモデルを作成することにありました。ここでのパラメータは、コンポーネントのトポロジー、形状、寸法、材料特性です。まず関連するシミュレーション・プログラムにより、目標関数または制約関数として定義する必要がある応答パラメータが生成されます。次に主な作業であるパラメータ化されたCADモデルを作成します。モデルはいくつかの通称スケッチをもとにして作成され、スケッチの座標およびスケッチそのものは、定義したパラメータによって決まります。高度なデザイン・プロセスの場合、それらのパラメータはデザイン変数の定義を考慮して定義され、それ以外の場合は、CADパラメータ決定には、UniGraphicsで簡単に定義できる特殊な方程式の助けを借りて、デザイン変数が使用されます。
実際のCADモデルには非常に多くのパラメータが含まれます。例えば、簡単なラジエータ・ブラケットを記述する場合でも200以上のパラメータになります。しかし、これまでに定義された方法を使うことにより、10種類のデザイン変数を定義するだけで済みます。最適化プロセスでは、それ以外のパラメータは常に定数か、この10個の変数の関数になります。適切にパラメータ化されたモデルを作成することにより、キー・パラメータを変更するだけで、異なる製品系列の自動車用の変形したモデルを作成することが可能になります。
この例でのキー・パラメータは、ブラケットの高さおよび長さに関係することになり、そのキー・パラメータを最適化プロセスに使うことにより、最適化用の新しいモデルを利用することができます。
テストモデルをベースにしたエンジン・キャリブレーション
これまでに紹介した全てのアプリケーションでは、システムの挙動を予測するために様々なシミュレーションを利用しました。しかし、OPTIMUSが提供する最適化手順は、システムのテストベースモデルと統合することもできます。1つの興味深い例として、エンジンテストベンチの結果に基づいたエンジン・キャリブレーションがあります。例えば、エンジントルクは色々なエンジンスピード、負荷、および点火時期の進角の関数としての空気燃料比で測定されます。OPELのエンジニアは、OPTIMUSを用いて実験計画を作成しました。まず、エンジンテストベンチで実験を行い、その結果のエンジントルクを測定しました。この測定結果はOPTIMUSにインポートされ、応答表面技術(RSM)を使って1枚のエンジンマップが作成されました。特定の制約条件で最高のエンジン全体のパフォーマンスを得る為に、このRSMを最適化ループに使用しました。OPTIMUSの中でエンジン・マップの作成と最適化プロセスを自動化することで、エンジン全体のマップ上での最適な点火時期を決定する為の800の二次的最適化問題が自動的に実行されました。
