厳しさを増す騒音基準に適合した高品質なトラックの開発

トラックメーカーに課せられる騒音規制はますます厳しさを増しているため、Volvo Truck社においても、同社の幅広いトラック製品群の車外騒音を最小限に抑えるためにあらゆる手段が講じられています。Volvo Truck社のNVH実験室では、様々な車両運転条件のもとでトラックの車外騒音を系統的に測定・分析・最適化するためLMSのNVH実験システムが用いられています。
新型トラックの開発期間中、Volvo Truck社のNVH専門家たちは、エンジン、吸排気装置、変速機、トランスミッションなど、トラックの駆動系全体から生じる騒音の削減に重点的に取り組みます。Volvo Truck社においては、駆動系が車外騒音のオーバーオール値に与える寄与度を入念に分析し最小化する上で、LMSのシステムが大きな役割を果たしています。結果として、より効率的なディーゼル駆動系でありながら、厳しさを増す騒音規制に適合したより静粛なトラックが完成します。
Volvo Truck社のトラックブランド、“グローブトロッター
Volvo Truck社は、全世界130ヵ国以上の国々でトラックの販売・サービスを手掛ける世界第2位の大型トラックメーカーです。トラック輸送の需要が高まる中、Volvo Truck社は世界市場におけるポジションをさらに強化しようと、特に経済性と環境に配慮したトラックの開発に重点的に取り組んでいます。この取り組みにおいては、燃料効率の向上と騒音放射の低減が重要な要素となっています。
車外騒音規制が厳しさを増すにつれ、Volvo Truck社でも、個々の新型トラックごとに車外騒音のオーバーオール値に最も寄与する要因の解明に焦点が当てられています。50km/hまでのスピードでは、トラックの車外騒音は大部分がその駆動系から生じます。そのためVolvo Truck社は、騒音のオーバーオール値に及ぼす駆動系の影響を入念にコントロールしながら、より静かな駆動系サブアセンブリの開発に積極的に取り組んでいます。それより高速になると、トラックのタイヤが最大の騒音源となります。そこでVolvo Truck社は、新型タイヤの種類や形状を評価することによって、タイヤの転がり音を削減することにかなりの力を注いでいます。
駆動系の騒音問題を掘り下げる

駆動系ノイズ削減に対する取り組みの一環として、Volvo社のエンジニアは駆動系の個々のサブシステムに対して様々な音響試験を実施します。排気系は通過騒音の主要な発生源であるとともに、排気騒音規制においては試験条件や許容される騒音レベルが地域によって大きく異なるため、特に念入りに試験されます。また、エンジン開発プログラムの期間中、Volvo社のエンジニアは試作エンジンの音響性能試験を広範囲に実施します。その際に、9~16リッターまでカバーするVolvo Truck製6気筒直列ディーゼルエンジンは、ダイナモメータが備えられた専用の半無響エンジン実験室で試
験されます。
この実験施設では、エンジニアはエンジンの動作を正確にコントロールし、生じた音響信号を測定することが可能です。このようなエンジン試験では、多くの場合変速機アセンブリを試験装置に組み込んでそれをエンジンに接続し、ギアシフト操作を自動コントロールすることによって、エンジンと変速機の間の機械的な相互作用が調べられます。標準的な試験は、エンジンと変速機の組み合わせ構成を用いて、ランナップまたはランダウン、あるいはその両方のサイクルを通して実施されます。これらの試験中、エンジニアは16チャンネルのLMS試験装置を用いて、供試体の周囲に半球状に配置されたマイクロホンで
信号を収集し処理します。この試験構成では、Volvo社のパワートレイン部門のエンジニアは、音圧レベルのほかに放射音の方向も評価することが可能です。
「我々はLMSの試験装置を用いて、実際そのままの稼働条件のもと、エンジンと変速機の構造および音響特性について徹底的に調査をしています」と、スウェーデンのイエテボリ市にあるVolvo社パワートレイン部門に所属する変速機試験エンジニアのHans Kask氏は説明しています。
「LMSのシステムは多才な測定機能を備えているので、我々は初期の試験結果から得られた情報を基に試験方法を柔軟に変更することができます。例えば、もっと詳細な試験を実施したり、別の種類の試験に即座に移ったりできます。もう1つの利点は、このシステムの高い計測安定性です。日々の測定値のズレは0.1dB以下に抑えられています。我々は音響試験の他にも、LMSのシステムを用いて変速機アセンブリの実稼働変形形状を測定し、各パーツの動きやパーツ同士の相互作用を適切に把握しています。
十分な情報や知見が得られたならば、我々は結果を比較・評価し、これらを関連する設計、製造、およびコストの制約条件に照らして検討します。効果的な設計変更案を決定する際には、設計者と試験エンジニアの間でなされる話し合いも考慮され、そこで特定の経験や感覚そして判断が加えられます。最終的に、我々が実験室で収集した音響データは、LMSの音響シミュレーション用ソフトウェアで作成したエンジン音響モデルの妥当性を評価し更新するために利用されます。」
フルビークル状態での車外騒音特性の確認
実験用の試作トラックが完全な形で利用可能になると、通過騒音試験専用の半無響実験室でトラックの車外騒音特性が評価されます。この屋内試験設備では、固定された数多くのマイクロホンからの信号を多重化することで、トラックがマイクロホンを通過する効果を作り出し、それによって屋外での通過騒音試験を模擬することが可能です。この施設の音響試験システムは、マイクロホン信号を収集するためのLMS SCADASフロントエンドと、測定データを後処理し評価するためのLMS CADA-Xソフトウェアで構成されています。
「Volvo Truck社のトラック騒音試験室では、途中何回かシステムをアップグレードしながら、12年以上に渡ってLMSの試験装置を使用してきました」と、イエテボリ市にあるVolvo Truck社のNVH実験室長Kaj Bodlund氏は述べています。
「LMSのデータ収集・処理ソリューションによって、我々は高い試験効率を手に入れ、実験用の試作車が限られた期間しか利用できなくとも、それを最大限に活用できるようになりました。新たな試験をセットアップする際も、LMSシステムのユーザーインターフェースによって、効率良く駆動系の細部やマイクロホンアレーのレイアウト仕様などの測定セットアップ情報を指定することができます。定められた簡単なマイクロホン校正手続きを実行した後、オペレーターは測定を実施して、最大ノイズレベルの変動を考慮に入れた基本データチェックを評価します。データの後処理が終われば、Volvo Truck社内ネットワークを介して結果とレポートが関係者間で共有されます。異なる駆動系を持つトラックの通過騒音の結果を比較することは、設計変更を決定したり将来の開発のための設計ガイドラインを記述したりする上で、我々にとって非常に重要なことです。通常、実験室で収集した測定データは、後からスウェーデンのブロースにあるVolvo Truck社の専用屋外通過騒音試験コースで実施される認証試験において確認が取られます。」
進化し続ける実験の課題に応える
Volvo Truck社では、LMSの実験ソリューションの利用が、車外騒音エンジニアリングを要求目標に向けて推進するために必要な現実的かつ系統的な手法の確立に役立っています。詳細にわたるエンジニアリングプロセスの全体を通じて、LMSの車外騒音測定システムが設計用試作車の評価と仮想モデルの更新に活用されています。「LMSの実験システムのお陰で、Volvo Truck社はNVH試験業務の効率と精度を徐々に向上させ、短期化する開発サイクルや限定された試作車の利用にもうまく対処できるようになりました」とKaj Bodlund氏は締めくくっています。
「この点において、我が社に配備されたLMSの実験ソリューションは、厳しさを増す車外騒音基準に適合する高品質なトラックの開発に大きく貢献しています。」