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Valeo社における量販車向け超音波パークアシストの開発

LMS SYSNOISEによる音響センサーシステムの最適化

Optimization of Acoustic Sensing Systems 1狭い駐車スペースに車を入れようとすると、警告音が車の前後に何かあるぞと教えてくれます。見えない障害物に接近するにつれて、警告音の間隔は徐々に短くなります。これがValeo社の超音波パークアシストシステムの仕事です。これまでエンジニアは、ほんの一握りの高級車のために、苦労しながら何ヶ月もかけて車のモックアップに手を加え微調整しながら開発してきました。しかしValeo社は、平均的なミニバンやスポーツ・ユーティリティ・ビークル(SUV)そしてファミリーカーなどの量販車にまでそのビジネスを広げています。

これらの車種では利幅は下がりますが、市場規模が巨大であるため、会社としては収益の伸びが見込めます。しかしながら、この戦略には大きな困難が伴います。車種が増えたため、エンジニアはそれぞれのセンサーとマウントの設計にあまり時間を費やすことができません。そこで、音響シミュレーションが有用になります。これまで試作実験に要していた時間の半分以下で、Valeo社はこの画期的な音響装置を開発できるようになったのです。超音波パークアシストシステムは、様々な探知装置や開閉装置の開発に前倒しでシミュレーションを活用しようとするValeo社の戦略の一例にすぎません。現在開発中のウィンドウ開閉装置もその1つです。

Valeo社の超音波パークアシスト(UPA)装置の開発に音響シミュレーションを活用することは、同社のスイッチおよびセンサーシステム部門のシミュレーション担当マネージャであるRichard Rapp博士の発案でした。彼は、自動車用センサーと警告装置の分野で世界的リーダー企業の1つである同社に、解析技術の応用研究を行うため1997年に入社しました。今日、この分野の製品には、超音波パークアシストシステム、死角探知システム、車線逸脱警告システムなどの運転補助システムがあります。Valeo社は一次部品メーカーとして、世界の主要自動車メーカーのほとんどすべてに製品を供給しています。

Rapp博士は、利益の見込める量販車市場の需要に応えるには、パークアシストシステムの開発業務をもっと早く遂行する必要があると、すぐに気づいたと述べています。「物理プロトタイプの大規模な実験を通して行っていた以前の開発アプローチでは多大な時間を要していました。そのため、これらセンサーとマウントの開発をスピードアップするために、シミュレーションを利用することは当然の成り行きでした」と、彼は指摘しています。

言うは易く行うは難し

UPAの仕組みはまったく単純です。それは、こうもりや潜水艦のソナーシステムと同様です。40キロヘルツの電気信号で励起されると、車のバンパーに埋め込まれた圧電セラミック膜がその共振周波数で振動し、音波を放射して車の進路方向にある物体に反射させます。反射エコーが同じ膜で検知されると、それが振動して圧電過程の逆(音響エネルギーから電気信号への変換)が行われます。そして、装置の内部回路がエコーの所要時間を記録し、それをもとに車から物体までの距離を計算します。

装置の開発において、エンジニアは、適切な動作を保証するために放射音波の振幅と方向を定める必要があるとRapp博士は説明しています。「エネルギーが過大だと、疑似的な二次エコーが生じてシステムを混乱させます。エネルギーが過小だと、反射が少なく検知されない恐れがあります」と、彼は話しています。事を複雑にしているのは、車のバンパーへのセンサーの取り付け方法によって、放射音が大きく影響を受けることです。その要因には、マウントの窪み深さ、漏斗形状のマウント開口部の角度、バンパー上の位置、そして、ナンバープレートやラジエータグリル、トレーラー牽引装置、トリムやオーバーハングなど、周辺の全パーツの位置などがあります。

このように多数の要因を考慮するには、かなりのノウハウと時間が必要です。シミュレーションが用いられる前の数年間、エンジニアはかなりの時間を費やして、正しい構成が見つかるまでバンパーと車体のモックアップの物理プロトタイプをあれこれいじり回していました。不幸にも、たびたび生じる車体の設計変更のために、エンジニアは何度も何度も装置を再設計する必要がありました。また、品質上の問題は、試験の最終段階になって初めて表面化することが多く、最適設計に向かうとは限らない一時しのぎの修正が行われるだけでした。

連鎖式仮想プロセス

Optimization of Acoustic Sensing Systems 4これらの問題を克服するため、Rapp博士は完全にデジタル化された開発ループへ移行する戦略を立てています。彼はこの手法を「連鎖式仮想プロセス」と呼んでいますが、これは概念設計から最終設計まで、仮想プロトタイピングとシミュレーションを通じて設計を進めるという意味です。「このプロセスによって、我々は開発サイクルの初期段階から多くのエンジニアリングを実施し、サイクルの終了近くになって問題を解決するのではなく、早期に設計案を調査し改良することが可能になります」と、Rapp博士は説明しています。「物理プロトタイプは、設計の最終的な検証に用いられるだけとなります。」

この連鎖式仮想プロセスは、ANSYS有限要素ソフトウェアを用いたモーダル解析で開始されます。ここで、センサー膜の共振周波数が40キロヘルツ付近にあることが確認されます。次に、ANSYSで動的応答解析が実行され、振動の振幅が得られます。これらのデータは、LMS SYSNOISE音響シミュレーションプログラムに渡され、境界要素法によって面圧とセンサーが生成する音場が計算されます。多数のポストプロセッシングオプションによって、LMS SYSNOISEからは様々な出力が得られます。それらには、面圧の時刻歴または周波数応答関数、音響インテンシティ、表面速度、カラーコンター図、棒グラフ、および二次元の指向性極プロットがあります。

Rapp博士によると、Valeo社のエンジニアにとって最も役立つ情報は、音場の形状と強さを表した半球状の包絡面だそうです。「LMS SYSNOISEは、音場を三次元で正確に表現してくれます。これによって我々は、センサーに対して以前は分からなかったことも理解できるようになります」と、Rapp博士は話しています。「この機能は、センサーマウントと周辺の構造の影響を評価する上で、特に役立ちます。車の背後を全範囲に渡ってカバーするには、水平方向の放射は広く、一方で、地面からの反射を最小限に抑えるには、鉛直方向の放射は狭いことが重要です。これまでモックアップで作業していたときは、多数の試験が必要でした。今では、プロトタイプが組み立てられる前に、製品の挙動を予測し改善することが可能になりました。」


説得力のあるメリット

Optimization of Acoustic Sensing Systems 5音響シミュレーションは、Valeo社に説得力のある効果をもたらしました。Rapp博士は、このプロセスによってエンジニアが節減できた時間は、試作実験のみを用いて製品開発を行った場合に通常必要とする時間の50%に上ると推定しています。「時間節減の他にも、我々はコストを低減し、品質を向上させ、市場の需要と顧客の期待に正確に応える革新的な製品を開発するための、製品挙動に対するより多くの知識を得ました」と、彼は説明しています。「その結果、我々は量販車向けの音響センサーシステムを、短期間に効率良く、そして最適かつ斬新なデザインで開発できるようになりました。」

Rapp博士はまた、音響シミュレーションから得られる三次元のグラフィックス出力は、同社の増え続ける顧客たちとこれまで以上に密接に作業することを可能にしたと報告しています。「シミュレーションによって、我々は自動車メーカー各社に我が社のノウハウを示すことができ、彼らに我々の製品挙動に関する知識の深さを印象づけることができました」と、彼は述べています。
「顧客から信頼を得る上でも、シミュレーションは大きなビジネス上の価値を持っています。また、エンジニアリング上の面からは、シミュレーションから得られる定量的な情報は、車のバンパーと周辺構造の構成に対する変更提案を逆に顧客に返すことも可能にします。」

技術の統合と拡張
Optimization of Acoustic Sensing Systems 2UPAなどの交通環境用センサーシステム以外にも、Valeo社のスイッチおよびセンサーシステム部門は、エンジンセンサー、クルーズコントロール、インパネのスイッチ類、その他モジュールなど、多数の装置を開発しています。

Rapp博士によると、これらの装置やコンポーネントの開発も、設計と様々なタイプの解析のシームレスな技術統合にかかっていますが、連鎖式仮想プロセスの恩恵を受けることになるそうです。Valeo社は、CADについてはCATIA V5を、詳細FE解析についてはANSYSを標準的に使用しています。そして、音響シミュレーションにはLMS SYSNOISEが多用されています。さら
にまた、機構運動、耐久性、振動といった他の性能に関わる設計項目の検討のために、これら以外の技術も連鎖式仮想プロセスに統合される予定です。

Rapp博士は、これら技術を統合するためにLMS Virtual.Labプラットフォームを使用していますが、LMS Virtual.Labは、CATIAとANSYSそしてそれ以外の様々な性能に関わる設計項目の解析機能が理想的に結び付けられていると説明しています。ユーザーは、ANSYSのモデルと結果にアクセスできるだけでなく、ANSYSをLMS Virtual.Labがサポートするエンジニアリング工程に組み込むことができます。LMS Virtual.Labを通して、
ANSYS解析のセットアップとANSYSソルバーの起動を自動化することも可能になります。


このような環境においては、LMS Virtual.Labは、設計と解析のプログラム同士を互いに結合する共通プラットフォームとしての機能を果たします。そうでなければ、これらのプログラムは別個に実行され、ユーザーはモデルを再構築したり、メッシュを複製したり、システム間で情報をコピーしたりする必要があります。LMS Virtual.Labは、これら異なるアプリケーション間で完全なる関連性を維持します。 Optimization of Acoustic Sensing Systems 3その結果、あるプログラムからの出力は自動的に他のプログラムに適用されるのです。解析データのみならず設計データも同様です。このようにして、形状に加えられた変更は解析シーケンス全体に自動的に反映されるので、設計変更を効率的に評価することができ、異なる設計項目間のトレードオフを効果的に調整することができるのです。

この統合戦略の一環として、Valeo社は、機構系の運動と荷重解析のためのマルチボディ機構シミュレーションソフトウェアであるLMS Virtual.Lab Motionのテストも行いました。LMS Virtual.Lab Motionが選択された理由は、CATIA V5およびANSYSとシームレスに利用可能なこと、Virtual.Labプラット
フォームに統合されていること、弾性体構造を容易に扱えること、階層的なツリー構造であること、使い勝手がよいこと、そしてLMSから優れた技術サポートを受けられることでした。

マルチボディ シミュレーションのベンチマークテストでは、子供用安全保護ウィンドウの開閉器が解析されました、その目的は、アクチュエータアセンブリのバネ付き車が斜め四分円のロック位置に収まる際に、過度な開閉力が働かないようにすることでした。以前の試行錯誤的な実験では、バネ定数の変更と四分円形状の変更を1つずつ試していました。この方法でこれまで何とか設計できていましたが、それは最良の構成とは限りませんでした。マルチボディ シミュレーションをLMS Virtual.Lab Optimizationモジュールと組み合わせれば、すべてのパラメータを一度に最適化でき、すべての設計基準を満たす最適な設計がもたらされます。このテストケースで、LMS Virtual.Labは改良された設計で開閉力を30%削減することに成功しました。シミュレーションなしでは、恐らくこのような成果は得られなかったでしょう。

「これらシミュレーション技術を連鎖式仮想プロセスに統合したことは、これらツールの革新的利用において、Valeo社が指導的役割を果たしていることを示していると言えます。最新技術を利用すること自体が目的ではありませんが、競争の激しい自動車業界サプライチェーンの中で、我々の立場を強める効果的な方法であることは間違いありません。」



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