Toyota Racing Development社がより速くより安全な車両の設計とピット整備における最終決断を支援するためにLMS Virtual.Labを配備

レースでは何時間も何百マイルも走り続けます。しかし、たいてい数インチそしてコンマ何秒で勝者は決まります。通常、厳しいレース運営規制が課せられており、エンジンやボディスタイルは非常に似通ったものにならざるを得ません。そのため、シャシーやサスペンション設計の微妙な違いと、競技場の当日の状況に合わせて特別に調整される整備内容によって勝負が決まることが多いのです。
Toyota Racing Development社のようなトップレベルのレースチームにおいては、エンジニアリング シミュレーションがこの作業で重要な役割を果たしています。そしてLMS Virtual.Lab MotionとOptimizationの両モジュールが彼らの必勝法への鍵となっています。
現在Toyota Racing Development社はLMSと手を組んでモータースポーツに特化したシミュレーションパッケ
ージを開発しており、これをもとにかつてない速さと安全性を兼ね備えた車両でカーレースに大変革をもたらそうとしています。
トヨタのカーレースの歴史
トヨタはモータースポーツの分野で長い歴史を持っており、1970年代から北米の競技会に積極的に参戦してきました。インディ500、デイトナ24時間耐久レース、セブリング12時間耐久レース、バハ1000マイルレース、グランダムシリーズ、全米ホットロッド協会(NHRA)シリーズ、チャンピオンシップ・オートレース・チーム(CART)シリーズ、そしてトヨタ・セリカが世界記録を保持し続けているパイクス・ピーク・ヒルクライムレースなど、一連の北米競技会でファンたちはトヨタの勝利を目の当たりにしてきました。2004年にトヨタはNASCAR主催のクラフツマン・トラック・シリーズに初めて参戦しましたが、米国の純国内メーカー以外ではこのNASCARトップランクのレースに参加を要請された最初のメーカーとなりました。そして、シリーズ初参加のシーズンに、トヨタ・タンドラはいきなり4回の勝利を果たし、5回のポールポジションと25回の上位5位内を記録しました。
舞台裏のエンジニアたち
トップクラスのレーサーによるカーレースの魅力は、レース車が観客席を通過するときに耳にする強烈なエンジン音と、時速220マイル以上で互いに数インチを競い合うドライバーの運転技術と勇気にスリルと興奮を感じることから生まれます。しかしながら、このような魅力と栄光の陰には、Skip Essma氏のようなレース車両エンジニアの地道な努力によって築かれた成功があります。
彼は、トヨタの北米におけるカーレースプログラムのすべてをサポートするToyota Racing Development(TRD)U.S.A社に所属しています。米国トヨタ自動車販売株式会社の子会社であるTRD U.S.A社は、エンジンとレース車の設計・製造のほか、多くの市販トヨタ車向けに高性能パーツの製造・販売も手掛けています。「従来、車両開発の多くは勘と経験そして実物試験の繰り返しのみに頼っていました。しかしながら、車両開発コストを抑えるため、カーレース組織の運営団体は試験に厳しい制限を設けてきています」とEssma氏は話しています。
「結果として、現在トップクラスのレーシングチームはシミュレーションを多用することで、レースに勝てる車両開発に必要な専門知識とノウハウを高めようとしています。
巧妙さの競演

「コースでの競技の公平性を目指した厳格なルールのため、同一クラスの車両はすべて同一サイズのエンジンと同一の車体構成を持つことになります」と彼は説明しています。「これらの指導のもと、レーシングチームは2つの方法で競争力を身につけます。すなわち、より優れたシャシー構造を開発すること、コース、気象条件、タイヤ、およびドライバーの変動を考慮してレースごとに車両のサスペンションその他のシステムを最高に整備すること、この2点です。」
Essma氏によると、TRDではLMSのシミュレーションツールを利用してこれら両方に取り組んでいます。サスペンション装置をモデル化しさらには車両全体をモデル化して、それらの動的性能を予測するため、マルチボディシミュレーションソフトウェアであるLMSVirtual.Lab Motionが用いられます。またLMS Virtual.Lab Optimizationは、複数の(そして多くの場合対立する)設計要因の影響を比較する際に、実験計画法(DOE)による評価を多数連続して自動実行してくれるので、エンジニアは理にかなったトレードオフ判定を下すことができ、これら変数間のバランスが取れた洗練された設計へと焦点を定めることができるのです。これら両アプリケーションを密接に統合することで、最適化ルーチンが一連のマルチボディシミュレーションを駆動し、そこからDOEの結果を応答曲面モデル(RSM)として表示する連携アプローチが実現されます。これによって、重要パラメータがどのように交互作用しているか、そしてこれら変数のどの組み合わせが最適設計を構成しているかということが分かります。
仮想車両を走らせる

最良のシャシー設計を導くため、TRDはLMSVirtual.Lab Motionを用いてフレーム、サスペンション、ステアリング、ブレーキ系、そして車体も含んだ車両全体をモデル化しているとEssma氏は説明しています。このソフトウェアでマルチボディシミュレーションを実施することにより、エンジニアは操縦性、グリップ性、コーナリング性、バランス、そしてラップタイムを正確に予測できるようになります。Essma氏によると、TRDはサスペンションモデルを効率良くモデル化し解析して最適化できるLMS Virtual.Lab Motionの強力な機能を高く評価しています。CADと完全に統合されているので、エンジニアは設計変更を素早く反映させて機構および動的性能を解析できます。
また、ポストプロセッシングと可視化機能によって、サスペンション設計の問題箇所を効果的に特定し修正することができます。その最適化機能は、レース車両のマルチボディシミュレーションに関係した多数ある設計変数のすべてを管理し、エンジニアが車両全体にわたって最適な設計を見付け出すことを可能にしています。それらはまた、走行時のギア選択、バネ剛性、キャンバ角、トー角、アンチロールバー、アンチダイブジオメトリ、タイヤ空気圧、空力特性、冷却性など、レース当日にクルーチーフがピット整備において最善の決断を下すためのツールとしても役立っています。
「通常は1回の最適化検討で約12個の変数が調べられます。しかし時には、40~50ものパラメータを考慮して問題を解く場合もあります」とEssma氏は述べています。「マルチボディシミュレーションを最適化技術と組み合わせて自動化できなければ、この規模の問題を手作業で解くなんて全く現実的ではありません。モデリング、シミュレーション、そして最適化をすべて統合することで、我々は多数の設計案を効果的に調査でき、車両挙動を見抜く価値ある能力が得られ、考えられるすべての性能向上を完全に引き出すことが可能になるのです。レーシングチームに属するすべての人に言えることですが、クルーチーフというのは、何年ものレース経験を有し、レースが体の一部となっていて、車両挙動に関して深い洞察力を携えている人たちです。シミュレーションベースの最適化から得られる結果は、この知識とノウハウを有効活用するこれまでにない有力ツールとなっています」とEssma氏は話しています。
「シミュレーションは当て推量を排除し、意思決定プロセスに一貫性と客観性を組み込みます。」目標はもちろん車両速度をもっと上げることです。しかし、レースカーのエンジニアリングにおいて最優先の課題は安全性であり、シミュレーションは耐衝突安全性と操縦安定性を評価する上でも極めて貴重なツールとなっていることをEssma氏は強調しています。「シミュレーションを活用することで、我々は業界始まって以来最も速く安全な車両の開発が可能になるのです。
モータースポーツ専用のシミュレーションパッケージ

TRDは現在、NASCARクラフツマン・トラック・シリーズに出走するトヨタ・タンドラのシミュレーションにLMS Virtual.Lab MotionとOptimizationを使用しています。このシリーズに向けたシミュレーション作業は急速に増大しつつあり、レースプログラムの中でのマルチボディシミュレーションと最適化ツールの利用も拡大される予定です。「車両の概念設計段階から、クルーチーフが車両性能を最大限に引き出すためピット整備する様子の再現まで、全プロ
セスを通じて仮想プロトタイピング技術を利用できる点が素晴らしいのです」とEssma氏は説明しています。「トラックシリーズを超えて、我々が仮想プロトタイピングから得た知識とノウハウは必ずやインディカーその他のトヨタレース車に引き継がれることでしょう。」
導入プロセスの全体を通じて、LMS Internationalのアプリケーションエンジニア部隊とEssma氏および彼のTRDレースカーチームは密接に協力してきました。今回の作業およびTRDとの提携の一環として、LMSはレース車両エンジニア向けの専用アプリケーション「モータースポーツ・シミュレーション・パッケージ」を開発中です。同一パッケージ内にLMS Virtual.Lab MotionとOptimizationが緊密に統合され、レースチームが使用するユーザーインターフェースと強力な機能の数々が業界向けにカスタマイズされています。その機能は、サスペンション全体の設計と調整、および最適経路とコーススピード、空気力、トラクション、タイヤモデル、コーナリング、ステアリング、乗り心地と操安性に関する走路のシミュレーションが柱となっています。
「我々のレース車両に関する何年にも渡る幅広い経験とLMS Virtual.LabMotionの他に類を見ない機能の数々を組み合わせることで、勝利をもたらすレースカーをコースへ送り出そうとする我々レーシングチームの情熱と手腕を最大限に高める統合シミュレーションソリューションが生まれます」とEssma氏は語っています。「LMS Virtual.Labがもたらす確かな競争力によって、ここ何年かのうちにレース業界で我々の地位向上が実現することは間違いないでしょう。」