
このビジネス目標を達成するため、Miele社は長らく家電業界で行われてきた手間のかかる開発手法からの脱却を進めています。従来多くの家電
メーカーは、多くの試作実験サイクルを通して、設計後期になって残った騒音を消すために慌ただしく応急処置的な設計変更を繰り返していました。それに対してMiele社は、コンサルティング会社のNovicos社と協力しなが
らLMS Virtual.Lab Acousticsで放射音レベルを予測する仮想プロトタイピング技術の活用を進めています。これによってエンジニアは、早い段階から容易に騒音レベルを確認でき、その結果、彼らの専門知識を活かして洗濯機の動特性を素早く改良し、騒音レベルを前倒しでより効果的に低減できるようになりました。
競争戦略上の重要な要素
音響シミュレーションは競争戦略を練る上でも重要な要素となっています。Miele社の代表取締役であるEduard Sailer博士は、将来の事業プランにおける仮想プロトタイピングの重要な役割について言及しています。

「世界市場で強い存在感を示すには、100年以上に渡って我々を競合他社から差別化してきた高い品質基準をそのまま維持しつつ、できる限り迅速に新型家電製品を開発することが必要不可欠です」とSailer博士は説明しています。「先端技術の活用がこの戦略の鍵となります。例えば音響シミュレーションでは、我が社のエンジニアは開発プロセスの早い段階で仮想プロトタイプとコンピュータ解析を使用して、洗濯機のニューモデルに対し静粛性を効果的に設計できるようになります。」
Sailer博士によると、最高レベルの静粛性と信頼性そして利便性を持った洗濯機を開発することにかけては他のどんな家電メーカーにも負けないMiele社では、これらのツールは同社の技術専門家たちの素晴らしい技能を引き出すことにも役立っているそうです。「先端技術を活用することは、家電業界における我が社の技術面での指導的地位と、我が社の伝統である高水準な品質と顧客満足に対する継続的なこだわりを明示するものです」とSailer博士は述べています。
騒音の予測プロセス
Miele社は音響シミュレーション業務を推進するためにNovicos社と提携しています。同社はAirbus社、BMW社、DaimlerChrysler社、Volkswagen社など多くの顧客を抱える振動騒音分野のコンサルティング会社です。提携の目的は、新型洗濯機の設計において早い段階で正確に騒音レベルを予測するため、Miele社の開発サイクルで系統的に利用できるプロセスを開発して、そのベンチマークテストを行うことでした。
同社が考え出したプロセスの第1ステップでは、有限要素解析(FEA)によってモーターやポンプなど個々のコンポーネントの静的変位と振動モードが計算されます。次のステップでは、それらFEAの結果が弾性マルチボディダイナミクス(MBD)モデルの節点に送られます。このMBD解析では、洗濯機の質量アンバランス、重心、剛体の運動量、モーター特性、回転上昇時のプロファイル、そしてバネ、ダンパー、支持材、およびドアシールの特性曲線が考慮されます。
このMBD解析から、共振モードとモーダル座標における時刻歴応答データが得られます。すなわちこれらは洗濯機全体の動的挙動を表しています。このFEA/MBD連成解析からの出力データが、Novicos社が作成したMATLABスクリプトとFORTRANプログラムに送られます。この特製インターフェースは、データをLMS Virtual.Lab Acousticsの音響メッシュに直接転送可能な形式の固有ベクトルと表面粒子速度の振幅に変換します。LMS Virtual.Lab Acousticsは間接境界要素法(IBEM)をサポートしています。これは従来の直接BEMとは大きく異なり、自由端だけでなく分岐した面を含むような構造体に対しても問題なく音場解析を実行することが可能です。
このように、Novicos社のエンジニアはLMS Virtual.Lab Acousticsを使用して、洗濯機周りの音圧レベルを正確に予測し、出力データを様々なグラフィックス形式(特定周波数における音圧分布図、ある周波数レンジにおける指定した位置での音の振幅プロット、あるいは騒音に主に寄与するパーツを振幅と周波数で示したカラーマップなど)で表示します。
結果の検証
このプロセスの精度を確認するため、Miele社とNovicos社は、最初のプロジェクトとして既存洗濯機の騒音レベルをシミュレーションし、その結果を実測値と照らし合わせました。数種類の脱水速度で動作する洗濯機に対して6個の時系列マイクロホンから騒音レベルが収録され、その信号を分析して音響放射特性が割り出されました。
Miele社の上級メカニカルエンジニアで、このプロジェクトの責任者であるHans-Walter Beckmann氏は、LMS Virtual.Lab AcousticsによるNovicos社の計算結果は実測値と比べても全く遜色がなく、その結果このアプローチの精度が確認されたと述べています。「我々は、設計の早い段階から騒音レベルのシミュレーションが可能であることを実証し、そのプロセスは新型洗濯機の放射音を予測する上で十分役立つことを確認しました」とBeckmann氏は説明しています。
Beckmann氏はまた、Miele社は仮想プロトタイピングの潜在能力を固く信じてはいるが、試作ハードウェアを用いた実証試験は今も開発の重要な一部であることに変わりないと説明しています。「LMSの試験装置は長年にわたって我々のために大いに貢献してきました。そして今後も、設計案がMiele社の高い品質基準を満たしていることを検証する上で重要な役割を果たし続けるでしょう。音響シミュレーションは、騒音問題をより焦点の定まった少数の試験で究明できるよう、我々の取り組みを正しく方向付けてくれる技術であると我々は考えています。」
音響シミュレーションを早期に実施することのメリット
Beckmann氏によると、音響シミュレーションからは、騒音源および音が構造体を通してどのように伝わるかということに関して多くの知見が得られました。Novicos社とMiele社の両エンジニアが発見した重要な新事実の1つは、サイドパネルが以前考えられていたよりも多量の騒音を外部空間へ放射していたという点であり、それが吸音材の配置に関してさらなる検討につながりました。「我々は何十年もこういった機器を扱ってきましたが、我々の知らなかった騒音放射の新たな様相が音響解析によって明らかになったのです」とBeckmann氏は話しています。
「音響シミュレーションは、放射音を予測できるだけでなく騒音レベルを低減するための修正も簡単にできるという意味で、我々の製品開発サイクルにおいて大変価値あるものです」とBeckmann氏は話しています。「設計を変更して新たなシミュレーションを実行することは、物理プロトタイプを組み立てて試験するよりも非常に速いです。これは明らかに製品開発サイクルの短縮につながります。そうなれば、我々エンジニアリングスタッフはさらに多くの高品質な電気製品を短期間で開発できるようになります。」
競争上の理由から、Miele社は実際の時間短縮幅に関して詳しくは語りません。しかしこの業界では、最新機種の洗濯機に対して1回に数週間を要する試作実験サイクルを5~6回繰り返す必要があると考えられるので、少なくともその回数を半分に減らせる家電メーカーは、開発サイクルの内数ヶ月もの貴重な時間を節約できると見て間違いないでしょう。
最先端の技術

Marian Markiewicz博士とともにMiele社の音響シミュレーション業務の陣頭指揮を執ったNovicos社のCEOであるOlgierd Zaleski氏は、そのようなアプローチにおいてLMS Virtual.Lab Acousticsソフトウェアを使用する利点についてこう説明しています。「我々が設計に取り組む際に、LMS Virtual.Lab Acousticsの最適化機能は最も価値ある機能の1つとなります」と彼は述べています。「この技術によって我々は、マウント剛性、パネルの肉厚、モーター配置、フレームと側壁との間隔、あるいはフリース製吸音マットの位置など、様々な因子の影響を探索することで騒音レベルを最小限に抑えることが可能になります。」
Zaleski氏は、LMS Virtual.Lab Acousticsが持つ自動化機能の使いやすさと威力についても言及しています。例えば、モデルの包絡面、自由端、接合部、その他の条件を定義するとき、個別の操作を何回も繰り返す必要

がなく、たった1回のマウスクリックで境界条件を設定することが可能です。「これら作業の自動化によって仕事がはかどるだけでなく、境界条件を確実に設定でき、見落としもなくなります」とZaleski氏は指摘しています。
「FEモデルから取り込んだ形状をもとに簡単に音響メッシュを準備できるメッシュのスキニングやラッピングなどのツールにおいても、同様のメリットを見ることができます」と彼は説明しています。「このような機能によって、高品質なメッシュを数日どころか数時間で作成できるようになります。モデルのいくつかの詳細部では極めて多数の要素が必要になるため、場合によっては、これらの自動化機能がないと精度の良いメッシュを構築することは不可能でしょう。」

「純粋にエンジニアリングの観点から言うと、このように幅広い解析機能が単一の統合ソフトウェアに組み込まれていることで、開発の早い段階で騒音レベルを予測し最も静粛な設計案に早期に到達するために、我々が実施しうる最高の仕事ができるようになります」とZaleski氏は説明しています。「ビジネスの観点からは、ブランド価値を強化しトップレベルの収益成長率を後押しする静粛かつ高品質な製品の開発期間を根本的に短縮できることは、我々のお客様にとって最大のメリットであるため、サービスプロバイダーとしての我々にとってもLMS Virtual.Lab Acousticsが非常に貴重であることは間違いありません。」