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John DeereのエンジニアがLMSの振動騒音ツールを用いて製品開発の初期段階で騒音放射レベルを低減

建設機械に静粛性を設計する

noise emission optimization 1建設機械は、運転者の快適性や騒音問題が重要な検討項目であるとはいえ、やはり操作上の必要条件が満たされることを第一に設計されます。しかし、この分野でも静粛性は重要な製品特質となりつつあり、レベルに満たないメーカーは、国際市場での競争に苦戦を強いられるようになってきました。従来、メーカーは製品開発の終期近くの試作実験中に騒音問題が露呈すると、防音材の追加と構造変更によって騒音放射レベルの低減を図ってきました。しかしながら、このような土壇場での努力には多くの当て推量が絡み、時間と費用を無駄にしたり、しばしば解決というよりも別の問題を引き起こす結果となったりします。John Deere社は、同社の建設機械に静粛性を設計することで強力なブランド価値を創造し、そのリーダー的地位を強化することによって新しい境地を切り開いています。

差別化要因としての音響性能

noise emission optimization 2建設機械の騒音と運転者の快適性に対する懸念が高まるにつれて、政府規制と顧客要求の両方の観点から、この業界でも音響性能が製品の主要な差別化要因とみなされるようになってきました。しかしながら多くの場合、振動騒音問題は製品開発後期の試作実験中に予期せぬ騒音レベルが問題として持ち上がってくるまでは、解決のための努力が払われることはありません。このときすでに、設計はほとんど終了しており、大きな変更は全く論外な状況です。



防音トリムその他の吸音材を追加することによって騒音はいくらか緩和されますが、その発生源における不具合を解決することにはなりません。問題解決のために構造変更を施すこともありますが、しばしば無用の材料や重量を追加することになり、機械の他の部分に思いも寄らぬ共振を誘発する恐れもあります。それに、このプロセスはたいていストレスのたまる作業であり、うまくいくかどうかも分からない、かなりいい加減な変更を施すのが通常です。

グローバルな課題への取り組み

noise emission optimization 3John Deere社が、同社製品に対する騒音放射レベルのより効率的な低減方
法を調査した際に、設計修正が容易な製品開発の初期段階で振動騒音の効果的な予測を可能にするような新たな手法を模索しました。戦略として、彼らはある特定の製品ラインに振動騒音の予測技術を適用することによって、この手法を確立しようと考えました。

この早期騒音低減策を確立するために目標とされたDeere製品は、両サイドの油圧モーターと制御バルブで駆動される複数セットの車輪を持った汎用マシンである、スキッドステアローダーの製品ラインでした。この車両は車輪の向きが固定されており、走る方向を変えるときは、車両の片側の車輪に油圧駆動力を与え、もう一方の側にはブレーキを掛けて滑りながら曲がります。このシンプルで洗練された油圧駆動とステアリング方式のお陰で、この機械は非常に信頼性が高く多目的な利用が可能になっています。

音の発生源を正確に特定する

noise emission optimization 4スキッドステアローダーに対して振動騒音の予測技術を開発する取り組み
は、各地から集まったJohn Deere社のエンジニアとLMSエンジニアリングサービスグループとの共同作業で行われました。LMSからは音響シミュレーションのプロセス構築に関する技術支援が提供されました。

LMS の技術が採用された理由は、このような分野の音響問題の要件に
ぴったりの能力を備えていたからです。LMS Test .Labには、そのLMS
SCADAS IIIフロントエンドデータ収集システムを通じて実験データを収集するためと、音源への経路探索のための固体伝播音に対する伝達経路解析(TPA)や空気伝播音に対する音源特定解析(ASQ)など、結果を分析するための広範な試験制御と測定の機能が備えられています。また、LMS Virtual.Lab Noise and Vibrationには、既存コンポーネントの実験から得たモデルと設計中のコンポーネントの有限要素モデルを組み合わせることで、シミュレーション用の完全なシステムモデルを構築できる先進の機能も提供されています。このハイブリッドモデルを用いれば、製品構成のどのような変更案に対しても、LMS Virtual.Labによって振動応答や騒音レベルを予測することが可能になります。

「この取り組みにLMS社のソフトウェアを用いる主要なメリットのひとつは、全プロセスを単一の環境で実行で
きる点です。それによって、データの転送と変換に伴うトラブルを完全に排除することができるのです」と、イリノイ州モリーン市のJohn Deereテクニカルセンターで働くシニアNVHエンジニアのLoren DeVries氏は話しています。「さらに、それらプロセスは記録保存されるので、設計変更の影響を繰り返し検討したり、プロセスを他の製品に応用したりする際など、何度も解析を行うときに非常に手間が省けます。」

4段階にわたる音響シミュレーション

noise emission optimization 5DeVries氏によると、スキッドステアローダーにおいては4段階でプロセス
が完了したそうです。それらは、騒音源を特定する最初のベースラインとなる一連の音響試験、各音源の強さを定量化して音響伝達経路を調べる2番目の一連の試験、そして次に、これら試験結果をもとにしたハイブリッド音響モデルの構築、最後に、このモデルを用いた音響シミュレーションによって設計変更の影響を調べるための騒音レベルの予測でした。

ベースライン試験では、LMSの試験・分析システムを用いて、スキッドス
テアローダーの内部と周辺に置かれた一連のマイクロホンを通して標準の音響測定が行われました。この試験はスキッドステアローダーの通常稼働モードのすべてに対して実施されました。

実験データの分析から、主要な騒音源が周波数に基づいて特定されました。すなわち、3次のピークは車両のエンジンから、9次と13次と18次のピークは油圧モーターとポンプから生じていました。これらのピークに加えて、エンジン構造、吸気口/排気口、およびファンも騒音レベルのオーバーオール値に寄与していました。

これら騒音源のそれぞれに対して寄与度を定量化するため、一連の試験が集中的に行われました。それらは、構造体の1000を超える位置で稼働時の加速度を測定するランニングモード試験、加振器の加振力による実験モーダル解析、そして運転者の耳への音源伝播の相互FRF(周波数応答関数)の測定です。これらのデータを用いて、騒音源からの経路を明らかにするために、フレーム、マウント、バルブブロックなどを経由する固体伝播音に対するTPA解析、およびエンジン、車体パネル、吸気/排気口ノズルからの空気伝播音に対するASQ解析が実施されました。TPAとASQの解析から、放射される空気伝播音は固体伝播音ほど寄与していないことが明らかになりました。

noise emission optimization 6ハイブリッドモデルの構築に際しては、LMS Virtual.Labでスキッドステアローダーのハイブリッド音響モデルを生成するために必要な表面振動データを定めるために、前段階でTPAにより決定された励振関数が有限要素モデルへの入力荷重として用いられました。構造体の有限要素モデルは、第2段階で得られた振動応答データを用いて相関性が検証されました。ハイブリッドアプローチでは、実験に基づくデータが、運転者の耳位置での騒音レベルを予測するための仮想シミュレーションモデルの一翼を担います。

LMS Virtual.Labが備える予測機能として、表面速度を周波数レンジにわた
って目標位置の音圧と関連付ける音響伝達ベクトル(ATV)の機能、そして構造の振動モードを伝達ベクトルに重ね合わせるモーダルATV(MATV)の機能があります。この音響モデルからの予測結果とベースライン試験からの測定データとの相関性が検証され、その結果、良く一致することが判明しました。

音響モデルの妥当性が確認された結果、Deere社のエンジニアは、スキッドステアローダーの音響性能の改善に向けた騒音源と伝達経路の完全なる評価プロセスを完了することができました。シミュレーションは騒音に最も大きく寄与する油圧音に焦点を当てて行われました。それが固体伝播経路を辿って車体の外側パネルと床に伝わり、そこから空気中に放射されていました。
次に、LMS Virtual.Labのモデルを用いて、いくつかの設計変更が音圧レベルのオーバーオール値に与える影
響が検討されました。その結果、機械構成を根本的に変更する方が、フレーム構造を微妙に変更するよりも効果的であることが分かりました。このようにして、エンジニアは音響シミュレーションによってこれらの変更の影響を確認でき、いくつもの物理プロトタイプをテストすることなく、次期製品設計の指針となる名案を見付け出すことができたのです。

プロセスがもたらす恩恵

仮想シミュレーションのメリットは、試作実験の前に振動騒音源がはっきりと特定される点と、エンジニアが
設計変更案の騒音レベルに与える影響を即座に検討できる点であると、DeVries氏は説明しています。「結果
として、いくつもの物理プロトタイプを用いた試行錯誤的なテストは大幅に減り、我々は、製品開発の時間とコ
ストを削減できるとともに、以前よりも効果的に設計改良を施すことができるようになります」と彼は話しています。「実験は依然として開発の重要な部分を占めていますが、その目的は、土壇場でのトラブルシューティングから、開発初期段階でのハイブリッドモデル構築のためのデータ収集と、最終段階での設計目標が達成されていることの検証という2つの役割へと転換してきています。」

音響シミュレーションによるDeere社の時間とコストの節減効果はかなりのものがあります。DeVries氏によると、実験ベースの手法を用いた騒音低減策では3~4回もの試作実験サイクルを必要とするそうです。それぞれのサイクルにおいて、新しい鋳物、板金パネル、遮音壁、その他のコンポーネントを再設計し組み立てるのに数週間の工数と数万ドルの費用がかかります。振動騒音の予測シミュレーションは、試作実験サイクルを1~2回にまで減らすことによって、開発期間と費用を大幅に削減できる可能性を持っているのです。

John Deere社のスキッドステアローダー担当技術マネージャーであるGordon Miller氏は、音響シミュレーションの恩恵は時間とコストの節減効果をはるかに超えていると説明しています。「騒音低減は、世界的な建設機械市場においてますます重要となっています」とMiller氏は話しています。
「解析ツールを効果的に活用することが、試作の繰り返しを減らして製品化のスピードを速める上で極めて重要です。」



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