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Fiat研究センターにおける製品開発に先立った疲労寿命の予測

LMSの仮想シミュレーション技術が開発期間を6ヶ月短縮

durability process FE models LMS FALANCS test fatigue simulation 1
製品を設計し、物理プロトタイプを組み立てて、パーツが破損しないか確認するために疲労試験を行い、そして合格するまで大急ぎで設計と試験を繰り返し、問題を解決しようとする。このようなやり方は、かなりの時間と予算を必要とし、メーカーにとってもはや許されるものではありません。もう1つのオプションは、耐久試験に合格するよう本来不要なパーツや溶接や材料を追加するなど、最初から過剰設計を行うものです。これは、耐久性を考えるときに一部のメーカーが取る手段ですが、最終的に疲労試験に合格したからといって、そのプロトタイプが必ずしも最良設計とは言えないという問題が残ります。イタリアのトリノにあるFiat研究センターでは、もっと改善された方法を採用しています。
最近のプロジェクトで、同センターは、LMS FALANCSを利用して製品の耐久性を先行して評価することで、はるかに優れた設計を導くことに成功しました。これによってFiat研究センターは、開発費を約200,000ドル節減し、開発期間を少なくとも6ヶ月短縮することができました。シミュレーションによって、開発プロセスの早い段階から疲労寿命の予測が可能になり、多数の設計案を検討する余裕や、過剰設計に陥ることなく、また不要な「試作-実験」サイクルを繰り返すことなく、耐久性目標を満たす革新的な製品を開発する余裕がエンジニアに
与えられたのです。

Fiat研究センター(CRF)は、Case New Holland(CNH)社が設計するトラクターの運転台構造の開発に疲労寿命の予測手法を適用しました。CNH社は、Fiatグループの農業機械・建設機械メーカーであり、この分野で市場をリードする会社です。CRFの構造耐久性チームのリーダーであるKamel Bel nani博士は、設計プロセスの初期段階でLMS FALANCSを用いることによって、CNHの要求する高い耐久性目標を達成することができたと同時に、少なくと3つの試作実験サイクルを削減できたと語っています。CRFのエンジニアはまた、疲労寿命の
予測によって、耐久性目標を満たしながら運転台の製造コストもカットしました。これは、製品の採算性とCNHの業績の改善につながるものです。この成功をもとに、トラックの運転室や自動車の車体とシャシー構造など、他のFiat車両にも同じ疲労寿命予測手法が適用される予定です。

「長期にわたる過酷な使用環境のもとでも、トラクター運転台に高い信頼性を保証する必要があるため、仮想シミュレーションによって耐久性評価が実施されました。農業機械は、厳しい動的荷重に耐えなければいけません。ほとんどの場合、使用時に振動が加わるからです」と、Bel Knani博士は話しています。
「Case New Holland社との密接な協力関係のもと実施された今回のプロジェクトは、世界中の顧客がCNHブランドに抱くイメージ、すなわち優れた品質と信頼性、そして耐久性と乗り心地をさらに強化することが目的でした。」

3ステップのプロセス

durability process FE models LMS FALANCS test fatigue simulation 2Bel Knani博士によると、LMS FALANCSが今回のプロジェクトに選ばれた理由は必然的なものだったそうです。特に、CRFが行ったベンチマークテストでは、LMS FALANCSが非常にユーザーフレンドリーであること、そして様々な解析プログラムや測定データからコンポーネントの荷重と応力を直接取り込めることが示されました。また、このソフトウェアは順応性が高く、CRFが必要とする高度な耐久性シミュレーションに特化した機能をサポートしており、実験データと高い相関性を持った計算結果を得ることができます。さらに、LMSの技術サポートは有能な人材をそろえており、ユーザーの問い合わせや提案に即座に答えてくれます。

トラクター運転室の耐久性評価において、Fiat研究センターは3段階のシミュレーション工程を用いました。それらは次に示すような、マルチボディ シミュレーション(MBS)、有限要素モデリング(FEM)、そして疲労寿命予測(FLP)のステップです。


1 トラクターの基準となる運転条件でマルチボディ シミュレーションを実行する。その際に運転台構造の弾性を考慮する。そして運転台に作用する荷重の時刻歴データを決定する。


2 計算された荷重を運転台の有限要素モデルに適用し、MSC.NASTRANで解析することによって、振動モードと構造全体の応力を求める。


3 LMS FALANCSを用いて、計算された荷重と応力と、ユーザーによって選択された適切な疲労基準をもとに、損傷の起きそうな領域を決定し、運転台の疲労寿命を予測する。


解析に用いられるトラクターモデルは、運転台の骨格を形成するアーク溶接されたスチール製部品(シートメタルと押し出し成形ビーム)からなる立体骨組み構造と、それにサスペンションブッシュによって結合された駆動系の下部構造からできています。シミュレーションモデルには、シート、エアコン装置、操舵装置などの二次コンポーネントも含められました。シミュレーションへの入力は、対称および交互に並んだ段差の組み合わせです。これは、トラクターの典型的な運転条件を表しています。解析によって、運転台構造の1次固有振動数が外力の励振範囲から遠く離れていることが判明しました。

疲労破壊が発生しそうな最も危険な領域はシーム溶接部分であったため、溶接継ぎ手には特別なモデリング指針が採用されました。アーク溶接継ぎ手の疲労寿命計算は、通常、骨の折れる仕事です。その主な理由は、多種多様な製造工程、熱的効果、小さな切欠きなどの存在によって局部的な損傷パラメータを決定することが困難なためです。Fiat研究センターは、「ホットスポット」アプローチによってこれを克服しました。このアプローチは、応力を溶接先端へ外挿することによって疲労寿命予測を行うものです。これらの応力は、溶接継ぎ手を適切にモデル化するシェル要素と剛体要素を用いた有限要素解析で計算されます。

運転台構造の有限要素モデルの各要素における応力の時刻歴を計算するために、LMS FALANCSが用いられました。このソフトウェアは、有限要素解析で求めた単位荷重の応力を、MBSで計算された対応する繰り返し荷重と掛け合わせます。求まった応力の時刻歴は、見やすく理解しやすくするために、レインフローマトリックスまたは累積スペクトルの形式で表示されます。LMS FALANCSに組み込まれている損傷度計算アルゴリズムでは、材料特性、応力反復、そして疲労影響係数が適切に考慮されており、これによって、構造内の危険領域における累積損傷度が計算され、最終的に寿命予測が可能になります。このソフトウェアには、グラフ表示と時刻歴荷重プロットを同時に表示する機能があります。また、応力または損傷度の結果表示とともに、構造の変形アニメーションを表示することもできます。累積損傷度、疲労寿命、最大応力振幅、そして安全係数
は、すべて簡単にグラフィック表示が可能です。

CRFで用いられたこの3ステップのシミュレーション手法は、いくつかの運転台プロトタイプを用いて実施された台上試験で妥当性が検証されました。LMS FALANCSは、溶接継ぎ手部分で3箇所の破損を予測しましたが、これらは台上試験データによって最終的に確認されました。このようにして、Fiat研究センターによるMBS-FEM-FLPシミュレーション手法の妥当性が証明されたのです。


高い目標の設定

「この妥当性の確認されたシミュレーション手法によって、設計に潜む問題を指摘するためだけでなく、新型の運転台を開発する際にも、その要求される寿命に渡って確実に稼働するための指針を得るための、一歩進んだ形の疲労寿命予測を行うことができるようになりました」と、Bel Knani博士は説明しています。
durability process FE models LMS FALANCS test fatigue simulation 3












LMSの疲労寿命シミュレーションが、運転台構造の疲労損傷を予測することによって、複数の設計案の中で最も好ましい案を選択することに役立っています。


新型運転台の耐久性目標は、トラクターの耐用年限の間に決して疲労き裂が生じないことを保証するため、CNHによって意図的に高く設定されました。特に構造体に対しては、特定の負荷ブロックを5,000回繰り返すという耐久性目標が設定され、そして、シミュレーションによって高い残存率が達成されました。

Bel Knani博士は、12以上の設計代替案がMBS-FEM-FLPシミュレーション手法を用いて検討されたと説明しています。これによってCRFのエンジニアは、局部形状、シートメタル厚、およびシーム溶接の位置と寸法が異なるいくつかの運転台構造の耐久性を、仮想プロトタイプだけを用いて短期間に評価できるようになりました。特に、このシミュレーション手法によって、CNHの要求する高い耐久性目標を実現するのは、どの新型運転台であるか特定できるようになりました。そして、この新設計の運転台の物理プロトタイプで実施された台上試験で、数値シミュレーションから得られた結果の正しさが確認されました。


主要なビジネス上のメリット

「このように多数の設計代替案を、実機試験で調査することは非現実的です」と、Bel Knani博士は話しています。「シミュレーションによって、我々は以前よりも優れた設計を迅速に開発できるようになりました。そして、過剰設計に陥ることなく、疲労寿命の目標を達成できました。」

Bel Knani博士は、不要なパーツや材料あるいは溶接を用いることなく耐久性目標を達成できるということは、車両あたりの利益率を著しく押し上げ、CNHブランドの競争力を高めるという意味で、明らかにビジネス上の価値があると語っています。

「妥当性が確認された我々のMBS-FEM-FLP耐久性シミュレーション手法は、実際に次期トラクターの設計においても、その運転台や排気系などのコンポーネントの開発に利用しています」と、Bel Knani博士は説明しています。「さらに、トラクターを超えて、乗用車やトラックなど他の車両にも応用できます。このシミュレーションアプローチは、実に広い適用性があります。そのため、Fiat社が指導的役割を果たせる多くの工業分野で、世界
市場を相手にさらなる競争力を発揮できることでしょう。」



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