宇宙船の絶対確実なオペレーションを保証

宇宙船の機器や計器が宇宙航行に耐えうることを保証するため、オランダのノールドワイク市にある欧州宇宙機関(ESA)のテクニカルセンターESTECでは、モジュール型のLMS Test.Lab Environmentalシステムを使用してそれらの認定および受け入れ試験を実施しています。この552チャンネル(以前のシステムに比べて倍のチャンネル総数)のシステムは、過度な振動騒音に対して非常に敏感で複雑な供試体の問題点を、ESAがより確信を持って突き止める上で大いに役立っています。LMSの振動制御ソフトウェアと4台の独立したLMS SCADAS IIIフロントエンドステーション、そしてLMS Test.Labデータ収集/オンライン処理ソフトウェアによって、ESAは供試体を安全に保護しデータを最大限に保全しながら、複数の試験を同時に実行することが可能になります。すべてのデータ処理ステーションを単一の試験構成で配備することにより、ESAは国際宇宙ステーション(ISS)へ定期的に補給品を運ぶ無人宇宙輸送機ATVのようなヨーロッパ最大級の宇宙船の認定が可能になるのです。
ヨーロッパにおける過去最大の宇宙船への挑戦
専用のアリアン5打ち上げロケットに搭載される20トン級の無人ATVモジュールが2006年の初飛行に耐え抜くには、強烈な重力加速度と耳をつんざくブースター音に持ちこたえなければいけません。打ち上げの約7分後にフェアリングパネルと第一段メインエンジンが切り離されると、ロケットの第二段が円筒形のATVを高度260キロメートルの円軌道へと運びます。そして、地球周回軌道の半分を辿る弾道飛行を終えると、ATVはロケットから分離しISSへと接近して自動的にロシアのサービスモジュール”ズヴェズダ”にドッキングします。
もちろん宇宙船が打ち上げられる前に、モックアップ、試験モデル、実際の飛行モデルのそれぞれは、大きな期待に応えるだけの能力があることを確認するため、非常に厳しい測定手続に従って徹底的に試験されます。ESTECテクニカルセンターで、ESAは特製の試験設備を使用して宇宙船のアセンブリやコンポーネントに対して機構上の様々な試験活動を行っています。そこには、大型の動電型加振機と巨大な油圧加振機からなる環境振動試験設備に加えて、打ち上げ時と飛行時の過酷な音響負荷を再現できるLEAF(Largest European Acoustic Facility)と呼ばれる音響試験設備も備えられています。
リアルタイム処理ステーションに取り囲まれた供試体

2年前、ESAは15年間使い続けた旧型のデータ収集システムに替えて、最新式の環境試験システムへアップグレードしました。このLMS Test.Lab EnvironmentalソフトウェアとLMS SCADAS IIIハードウェアを結合した試験ソリューションは、全部で512のデータ収集チャンネルと40の振動制御チャンネルを備えています。その目的は、宇宙船の構造アセンブリと照らし合わせて数学モデルを検証すること、宇宙船の飛行モデルに対して振動騒音の受け入れ試験を実施すること、そして配備試験と衝撃試験を実施することです。試験装置全体の動作はマスター制御用ワークステーションが調整し、その間に、供試体を取り囲む島のように配置された最大4台の処理ステーションが大量の受信データの処理・分析を行います。各ステーションはそれぞれ独立して128のデータ収集チャンネルの絶え間ないデータ処理を管理し、リアルタイムに測定結果を表示して、試験が終了すると直ちにデジタル形式と印刷形式のレポートを出力します。
ESAの機械工学部門の実験マネージャであるGaetan Piret氏によると、個別に運搬可能な128チャンネルのデータ処理ステーションを使用することは、融通性、生産性、そしてデータの保全性の上で多大なメリットがあります。「我々は受け取った試験仕様に応じて、LMSのデータ処理ステーションを複数同時に行う試験に個別に割り当てたり、すべてのステーションを多くのチャンネル数を必要とする1つの大規模試験にまとめて割り当てたりしています。このやり方は、小型の宇宙船や機器類のサブアセンブリやコンポーネントに対して数多くの試験を実施する場合に効率アップにつながり、一方で倍のチャンネル数にすれば、衛星全体のより詳細な調査にも適応します。独立した4台のステーションからなるこのシステムのもう1つのメリットは、重大な危険や故障が生じた場合のデータ損失率を最悪ケースでも25%に収めることができる点です。他のシステムでは、すべてのデータが危険にさらされる可能性があります。さらに我々は、LMS Test.Labの並列スループット機能を用いて失われた情報も再処理できるようになりました。これは、デジタルテープレコーダーの設置を廃止することができた非常に頼りになる機能です。」
LMS Test.Labの直感的かつプロセス志向のワークブックの概念によって、宇宙船のアセンブリやコンポーネントに対し実施される長時間の試験活動も容易に保存記録することができ、その結果、試験手続きは非常に分かりやすく繰り返し可能なものとなるだけでなく、データの整合性も最大限守られます。このシステムは、すでに予備試験の段階から正確な計測に向けて試験装置類を準備するための作業を円滑化し促進しています。
Gaétan Piret氏は次のように説明しています。「いわゆる“たたき試験”では、オペレータは1回のハンマー加振に対するトランスデューサの応答を検証することに自動化手続きを使用しています。この方法はこれまでに比べてとても高速です。過去にはチャンネルごとに2人がかりでこの作業に取り組んでいました。」
LMS Test.LabがTEDS(トランスデューサ電子データシート)対応センサーから、センサーの名前、方向、シリアル番号、感度、校正内容などの情報を自動的に読み取って処理すると、それで計装段階は終わりです。
「LMS Test.Labのユーザーフレンドリーな予備試験機能を利用することで、我々は予備試験の総所要時間を数時間から最大丸1日も節約できるようになりました」とGaétan Piret氏は述べています。「試験準備作業をさらに能率化するため、我々はまた、パッチパネル方式(供試体の計器の配線と試験装置のデータ処理(および振動制御)ステーションとの間のコネクターベースのインターフェース)を採用しています。この簡単かつ融通性のある方式によって、我々はパッチパネルに数個のプラグを差し込むだけで、LMSの処理ステーションと供試体の計器を素早く接続できるのです。」
試験の準備が整うと、加振機に据え付けられた供試体に特定の励振パターンが加えられます。LMS Test.Labの閉ループ振動制御ステーションによって、この励振パターンは定義済みの荷重プロファイルと正確に一致するよう制御されます。また試験中いつでも、アセンブリに対し最も鋭い共振効果を正確に計測して検出する能力があり、貴重な供試体が最大限保護されることを完全に保証しています。このようにLMSの振動制御システムは、アセンブリ内の重要コンポーネントの振動レベルを確実かつリアルタイムに監視することで、過剰な試験を防止して供試体が決して損傷を受けることがないよう保護しています。また必要であれば、安全な停止を実現するセキュリティ励振パターンを始動することで試験を中断することができます。
トップクラスの計測精度とデータ整合性
システムに絶え間なく流れ込む測定データは、時間軸データのスループットと並行して、LMS Test.Labの正弦、ランダム、音響、または衝撃パルス信号処理のための高精度なオンラインデータリダクション用ソフトウェアによって処理されます。スループット性能は、全チャンネルが使用中でも25.8キロヘルツのサンプリングレートを維持できるほど素晴らしいものです。試験システムの振動制御とデータ処理の間でミスマッチエラーが生じないようにするため、振動制御のステータス情報がすべての処理ステーションで体系的に共有されています。この情報は、収集され処理された全データの“リアルタイムなラベル”としての役割を果たし、次のレベルの/ランダム加振試験を開始するとき、データリダクション手続きの平均化計算を自動的にリセットします。この自動化機能によって、手動による操作と処理の誤りが回避され、試験後の余分な再処理の必要がなくなります。
データの整合性を向上させるもう1つの機能は、LMS SCADAS IIIに組み込まれている電荷センサーとブリッジセンサーのコンディショニング機能です。この機能は、センサーのコンディショニングの設定と関連するすべてのデータ管理を監視するLMS Test.Labと相まって、多数の外部コンディショニングユニットを扱うことの負担を省きます。「LMSのデータ収集とオンライン処理機能の優れた品質と性能、そして最高品質のセンサーと改良されたセンサーのマウント手続きのお陰で、我々は測定精度を全体として50%向上させることができました」とGaetan Piret氏はコメントしています。
LMS Test.Labによって試験の柔軟性が大幅に向上
効果的に意思決定ができるよう、エンジニアたちは供試体の周りに集まって、彼らの会社が製造したサブアセンブリに関連する(計算された)結果表示をオンラインでモニターする機会を持ちます。試験の実行が完了すると、使用されたすべての処理ステーションの結果データベースが整理統合され、事前に定義されたデジタル形式のバッチレポートがPDFフォーマットで利用可能になります。LMS Test.Labはまた、毎秒3ページの速さで直ちにレポートを印刷することもでき、試験終了後に数分で紙ベースのレポートを生成することが可能です。特別な試験任務においては、ESAはLMS Test.Labの柔軟性に富んだMicrosoft Office準拠の機能を用いて、結果データの比較表と添付するグラフなど組み合わせたレポートを迅速に生成します。ESAは紙ベースのレポート生成から脱却するため、進行中および完了した試験に関するどのようなデジタル情報にも下請け業者の代表が直接アクセスできるよう、いくつかのコンピュータを接続する計画を持っています。
新しいLMS Test.Lab Environmental試験システムを2年間に渡り日々使用してきた経験をもとに、Gaetan Piret氏はこのシステムがESTECの試験業務をいかに効率化したかについて次のように要約しています。「この新しいシステムによって、我々は以前の2倍の測定チャンネル数を扱いながらも、試験のスループットタイムを削減できるようになったというのが最終的な所見です。試験の所要時間を削減することは、試験任務を低コストで遂行できることに直接つながります。倍のチャンネル総数によって、より大規模な供試体を扱うこと、より詳細な試験を実施すること、そして複数の試験を同時に実行することが可能になり、我々の測定対象範囲は大幅に拡大しています。LMS Test.Labの柔軟性は我々をさらに進歩させたと言っても過言ではありません。我々は音響試験と振動試験を素早く切り替えることができ、標準外の計器構成に対しても直ちに接続することができます。このようにLMS試験システムは、環境試験業務を優れた精度とデータ整合性で効率良く実行するのに大いに役立っており、我々の将来のヨーロッパ宇宙プロジェクトをサポートする高い信頼性と生産性が実現されています。」