LMS Imagine.Lab エンジニアリングサービス部門の協力のもと、Delphi のエンジニアは、LMS Imagine.Lab AMESim マルチドメイン・システムモデリングソフトウェアを使用して、次世代の低燃費・低排ガス型ディーゼル
エンジンの電子制御ユニットの設計および試験をサポートする高度なHiL シミュレータを効率良く開発しています。
自動車メーカー、エンジンメーカー、そして自動車サプライチェーンの各企業は、現在、急激に拡大しつつあるディーゼルエンジン車市場への対応に追われています。ヨーロッパで販売されている車の約半数はディーゼルエ
ンジン車であり、今後10 年間で世界需要は1600 万台から2900 万台まで、80% 以上拡大すると予想されています。ガソリンエンジン車より最大で40% 燃料効率が良く、20 年前に製造されたエンジンより60 倍もクリーンなディーゼルエンジンは、現在かつてないほどの売上げを上げています。
主な設計課題の1 つは、車およびエンジンの挙動をシミュレーションするためのHiL(hardware-in-the-loop) システムをいかに効率良く開発するかという点です。精度の良いHiL システムを使用することで、エンジニアは試作車ができる前の早い段階からエンジンコントロールユニット(ECU)の調整および試験が可能になります。通常であれば、ソフトウェアプログラマーは、新開発のエンジンや試作車ごとに何ヶ月もかけてコード全体を書き換えます。
このプロセスにはいくつかの障害がありました。それには膨大な時間が必要であり、モデルを完成させるには、車両の最終的な詳細設計と入手可能なCAD モデルを待つ必要がありました。もちろん、ECU やエンジンあるいは車両設計が変更されるたびに、HiL システムのプログラマーは最初からやり直すこともあります。その場合も、ソリューションは誰でも扱えるものではありませんでした。従来型の制御系モデルの多くは、リアルタイムにシミュレーション応答を供給できず、多くの場合、サブシステムのすべての動作を完全に表現していません。そのため、エンジニアは車両モックアップ上で一連の試験を実施することで、ECU の最終設計を微調整する必要がありました。
ボトルネックを阻止する

どのようにしてこのボトルネックを解消し、プロセスをスピードアップしたら良いでしょうか? 世界最大の総合自動車部品メーカーであり、ディーゼル燃料噴射装置とエンジン管理システム製品の世界的リーダーであるDelphi は、LMS Imagine.Lab AMESim システムモデリングソフトウェアを選択しました。このテクノロジーはマルチドメイン用途に適しているため、エンジニアは、油圧、空気圧、燃焼、熱などの各物理分野における、電子機器や機械システムのメカトロニクスシミュレーションを実施することができます。
Delphi は、その過去の実績からHiL 開発用にLMS Imagine.Lab AMESim を選択しました。同社には、以前このソフトウェアを使用して燃料噴射装置のモデリングを行った成功経験がありました。Delphi は、LMS Imagine 部門のコンサルティングサービスの実証された専門知識と、高度な技術を有するエンジン制御アプリケーション部隊の経歴を信用していました。
先進のモデリング機能に加えて、LMS Imagine.Lab AMESim の最大の利点の1 つは、ユーザーがモデルを組み立ててシミュレーションを実行する上で熟練したプログラマーである必要はないという点です。エンジニア自身が、様々なライブラリから定義済みコンポーネントをグラフィックス環境で選択し結合することで、システムシミュレーションモデルを作成します。これら選択されたものから、LMS Imagine.Lab AMESim が正常に機能する物理学ベースのシステムモデルを自動的に生成します。高精度なHiL モデルが開発サイクルの早い段階から完全な形で迅速に作成されるので、エンジニアは先行して問題を解決し、設計を最適化する時間的余裕が生まれます。すなわち、プロセス後期の試作実験や微調整の回数が削減されます。
記録的な速さで正確なモデルを組み立てるDelphi は、エンジンと車両システム用に特別に構成されたLMS Imagine.Lab AMESim Engine Control ソリューションの採用を決定しました。導入を開始するに当たって、同社はLMS のImagine 部門のコンサルティングサー
ビスにHiL アプリケーション専用のモデルを開発するよう依頼しました。

LMS Imagine.Lab AMESim のIFP-Engine ライブラリを用いて開発されたエンジンモデルは、ターボチャージャー付き吸気回路、排気回路、およびEGR ループを含むエアパス全体に関連した平均値エンジンモデル(MVEM)で構成されています。Delphi のエンジニアは、全サイクルのエンジン挙動をシミュレーションすることができました。計算負荷を管理することが容易なため、彼らは何日も待つことなく、エンジン性能に関する高精度な結果が得られ
ました。エンジニアはまた、LMS Imagine.Lab AMESim に準備されているより詳細な高周波エンジンモデルを用いることで、わずかなステップでエンジンサイクル全体を通じた燃焼室の挙動(熱交換とバルブ、コネクティングロッ
ドなどの動作を含む)をモデル化することもできました。
燃料噴射装置のモデルは、エンジンの高圧ポンプ、レール体積、および高圧バルブを模擬しています。またエンジンの熱的特性は、熱ライブラリでモデル化されます。動力伝達装置のモデルは、IFP-Drive ライブラリのコンポーネントを用いて構築されます。それは、フライホイール、エンジン摩擦トルク、クラッチ、変速機、ブレーキ装置、および主要な補機で構成されています。
完全なエンジン制御とHiL プロセスとして、最初の車両シミュレーションはOPAL プラットフォーム用に開発されました。Delphi は、このLMS Imagine.Lab AMESim モデルが、性能、柔軟性、そしてリアルタイムの適合性において、彼らの要件を完全に満たしていたと指摘しています。
今後の作業に向けたノウハウ
HiL シミュレータに詳細な物理表現を取り込むことができたおかげで、Delphi のエンジニアはモデリングとシミュレーションの時間を大幅に節約できただけでなく、以前の手法に比べてシミュレーション精度を向上させることもできました。同時に、特定のシステム挙動を検討する際に、はるかに多くのシミュレーションを実行することができ、エンジンコンポーネントと制御方式のモデル化においてその品質とロバスト性が強化されました。さらには、LMSのImagine 部門のエンジニアリングサービスとともに開発したLMS Imagine.Lab AMESimモデルと関連のシミュレーションプロセスは、Delphi の今後のECU およびHiL プロジェクトに対しても、手法として容易に適応させることが可能です。
長期的に見れば、エンジンおよび車両のシステムモデル作成にLMS Imagine.Lab AMESimのモジュール方式を適用することによって、Delphi のエンジニアがエンジン制御系に新技術を導入する際に、これら新技術を設計に組み込むときのエンジンモデルや車両モデルの維持管理におけるコスト増や遅延を回避しながら、制御系をシームレスに開発することが可能になります。この新しいプロセスは、Delphiが顧客の期待を満たす上で、そして信頼性の高いエンジン制御方式のECU を開発する上で大いに役立っています。その結果Delphi は、安
全性、信頼性、原価管理に関して自動車メーカーの厳しさを増す要求に応えることができました。