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Cosworth Technology社とArup社がエンジン音響解析に要する時間を大幅に短縮

LMSのATV技術がより効率的でより迅速な騒音予測を実現

Engine Development Reduce Engine Acoustic Analysis Time 1Cosworth Technology社は、英国を本拠地とする大手エンジニアリング コンサルタント会社のOve Arup & Partners(Arup)社との共同プロジェクトにおいて、新設計エンジンの放射音の予測に必要な時間を短縮させることに成功しました。パワートレインの分野で世界的な総合ソリューションプロバイダであるCosworth Technology社とArup社は、高級車用エンジンの音響性能評価をわずか数日の処理時間で完了させることができました。この大幅な時間短縮は2段階に渡って実現されています。まず、LMS Virtual.Lab Pre-Acousticsで専用の音響メッシュが迅速に作成され、次に、LMS Virtual.Lab Engine Acousticsの先進の音響伝達ベクトル(ATV)法によって、エンジン回転数の全域にわたる騒音レベルが迅速に予測されました。このアプローチがもたらした詳細な結果から、起こりうる問題点を正確に突き止め解決できる確信と保証が得られました。 


Engine Development Reduce Engine Acoustic Analysis Time 2従来の境界要素(BE)解析のアプローチでは、すべての荷重条件とエンジン回転数ごとに計算を繰り返す必要があるため、最近のエンジン設計プログラムの厳しい時間枠では、限られた数の周波数とエンジン回転数しか評価することができません。この新しいアプローチでは、ATV技術を活用することによって処理時間が大幅に短縮されます。ATVは、放射面上の各点における単位の振動速度と、任意の観測点における音圧の関係を示すものであり、エンジン回転数や振動応答とは無関係です。必要な荷重条件とエンジン回転数のもとで、ATVに構造振動を乗じるだけで放射音を予測できるのです。

Cosworth Technology社とArup社のエンジニアは、新開発の3リッターエンジンの設計にこのアプローチを適用して、1,500~6,750rpmの回転数と100~2,500Hzの周波数すべての組み合わせでエンジンの音響パワーレベルを計算しました。その結果、設計プロセスの早い段階で音響特性の詳細な情報が得られたため、基本エンジン設計が固まって試作機が作成される前に、外側リブ、オイルパンとラダーフレームのボルト配置、およびベルハウジングの設計を最適化することも可能になりました。

Engine Development Reduce Engine Acoustic Analysis Time 3ますます競争が激化している自動車市場では、消費者は、高出力で燃費が良いだけでなく、より洗練された特に静かなエンジンを求めています。構造の補強や大型化、絶縁材や制振材の適用といった従来型の騒音低減策では、重量と消費燃料の削減など他の設計目標との間で対立が生じます。このように厳しさを増すエンジニアリング目標は、目の肥えた消費者の増加と相まって、設計プロセスにおける音響エンジニアリングの重要性を更に高めています。目標が設定される際の考え方は、まず振動騒音レベルは車の全体性能の一部とみなされ、さらにそれは段階的にパワートレインのレベルにまで落とされます。エンジンから発生した騒音は、空気伝播と固体伝播の両方によって車室内に伝わります。この記事では主に空気伝播音の予測について述べていますが、エンジンマウントの振動もこの手続きの一環として計算され、そしてそれは固体伝播音の予測プロセスの第一歩となります。

最近のプロジェクト工程では実用的でない従来型のBEアプローチ

Engine Development Reduce Engine Acoustic Analysis Time 4エンジン設計者は、ブロックとヘッド、クランクシャフト、カムシャフト、冷却ジャケットなどの主要部品が定義される段階の、設計意図が固まった直後から騒音・振動の目標に対する取り組みを開始します。この段階が完了すると、エンジンの詳細な構造有限要素(FE)モデルを作成でき、熱応力、疲労、動特性、そして振動応答などさまざまな計算に使用できるようになります。試作実験は開発サイクルの後期でしか行われないので、エンジニアはエンジン放射音の計算をすぐに開始する必要があります。従来のBEアプローチでは、構造モデルからBEモデルを作成し、外表面の振動データを用いて音響放射問題のための境界条件を定義します。この境界条件は周波数とエンジン回転数によって変化するため、荷重条件ごとにBE解析を行わなければならないのがこのアプローチの欠点です。起こりうる問題をすべて検討するには、予想されるすべての条件を評価する必要があります。設計変更がとても高価となるような試作実験が実施される段階に至って、音響特性上の問題が発見された場合は、スケジュールの遅れとコストの増大を引き起こしてしまいます。 

Cosworth Technology社とArup社のエンジニアは、新しいV6エンジンの設計に際して、従来のBEアプローチの何分の一かの時間で完全な音響評価を可能にするプロセスを確立しました。その結果、設計プログラムの時間枠内にうまく当てはまる解析プロセスへの道が開けました。
 
このオールアルミ製エンジンには、搭載される高級車の全体目標から導き出された厳しい騒音基準を満たすことが要求されました。LMS Virtual.Lab Engine Acousticsが提供する音響シミュレーション環境は、試作に先立って設計の最適化を実現する余裕も与えてくれます。この環境には、構造モデルをもとにBEモデルを作成する時間を大幅に短縮するツールも含まれていますが、何よりも重要なことは、新しいモーダル音響伝達ベクトル(MATV)の技術によって、エンジン回転数と周波数の組み合わせごとにBE解析を実施する必要がなくなった
という点であり、これこそ、このプロセスの成功の鍵だったと言えます。

放射面メッシュ作成の合理化

 放射面のB E メッシュは、LMS Virtual.Lab Pre-Acousticsのメッシュ分割ツールを用いて作成されました。メッシング作業はこれまでしばしば厄介な問題でありました。なぜなら、構造FEメッシュが作成される際にベースとなるサーフェスデータは、BEメッシングにとってあまりにも詳細すぎるため、ほとんどの場合、多大なメッシュ修正作業が必要であるためです。LMS Virtual.Lab Pre-Acousticsでは、ラッピング技法を用いて構造メッシュの外表面に包絡面メッシュを自動作成し、このメッシング作業のボトルネックを解消しています。穴をふさいだり、リブなどの不要な詳細形状を削除したり、エンジンブロックとバルブカバーなどのパーツ間の溝を埋めたりできる特別のツールが準備されています。これらのツールを利用することによって、高品質なメッシュをわずか数時間で作成することが可能になります。

エンジン構造の詳細なF E モデルが作成され、固有値解析によって3,100Hz以下の周波数レンジで約750個
のモードが計算されました。この構造モデルに対する荷重は、シリンダ圧と慣性力/モーメントの2つです。これらの励振は、シリンダと主軸受の位置に適用されます。LMS Virtual.Lab Engine Acousticsを使用して、生成された構造モード形状から、100~2,500Hzの周波数レンジで適切な間隔ごとにモーダル音響伝達ベクトルMATV)が計算されました。MATVはATVを基に計算されますが、各モード形状の放射音に対する寄与度を表しています。このMATVは、騒音低減に向けて構造変更を行った場合、放射音がどのように変化するかを見るための基礎となるため、今回のプロセス全体にとって基礎となるものです。
 
MATVは、ISO 3744に準拠して、実験室のマイクロホン位置を模した19の観測点からなるメッシュ位置で計算されました。LMS Virtual.Lab Engine Acousticsには、マスター周波数において計算されたATV値と限られた数の観測点の間を補間して、任意のATVと音響結果を計算する機能があります。次にMATVに対して対応するモード寄与係数が乗じられ、放射音が計算されます。LMS Virtual.Lab Engine Acousticsは、異なるシステムのデータにもアクセスを可能にする環境を提供しており、データの取り扱いも容易になっています。このデータ処理の容易さと効率的なプロセス管理機能により、作業時間の大幅な節減が可能になるのです。

大幅な時間の節約

このように大幅に時間を節約できたのは、Arup社とCosworth Technology社のエンジニアが、たった1回のBE解析であらゆる稼働条件下での音響放射を予測できたからです。BE解析の所用時間はたった数時間であり、構造モードに変更が生じても再計算の必要はありません。すべての周波数について計算を完了したならば、カラーマップ機能を用いて、回転次数に関連した事象と共振に関連した事象の両方を表示することができます。この情報をすべて1つの図にまとめることにより、音響解析結果をさまざまな構造モードや設計項目と簡単に関連付けることができます。構造メッシュの入手から放射音のカラーマップの表示まで、プロセス全体の1回目の実行に要した計算時間は2~3日でした。かつては、限られた数の周波数とエンジン回転数における情報しか入手できませんでしたが、それに要した時間よりも大幅に短縮することができました。

Cosworth Technology社とArup社のエンジニアは、エンジン放射音をすべての回転数と荷重条件に関して予測することができる、非常に効率の良い新しいプロセスの確立に成功しました。重要なことは、最近のエンジン設計プログラムに見られる非常に厳しい時間枠内でこのプロセスが完了できたという点です。このプロセス全体の基礎であるMATV技術によって、放射音や音響パワーの問題を構造の動特性にさかのぼって検討することが可能になり、そして設計変更を迅速に評価することが可能になりました。最終的に音響エンジニアたちは、構造設計項目も組み込んだ形で、エンジン設計を最適化する機会を得ることができたのです。



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