新しい自動車向け環境試験システムによって、試験の生産性と柔軟性がさらに向上

Bosch社のガソリン燃料噴射装置の性能と耐久性が、自動車エンジンの動作と信頼性を決定しています。そのためBosch社では、噴射装置が全寿命を通して計画通りに動作することを確認するため、これらのパーツの試験を広範囲に渡って過酷な条件下で実施しています。主要な試験装置は4セットのLMS環境試験システムであり、これらをBosch社では、動的振動試験用の加振器システムと組み合わせて使用しています。最近、Bosch社は8チャンネル環境試験システムのすべてをLMS Test.LabとLMS SCADAS IIIにアップグレードし、その自動車用認定試験に対する高い生産性と柔軟性を手に入れました。その改良された機能に加えて、Bosch社は、LMS Test.Labの優れたユーザーインターフェースとネットワーク化されたデータ収集機能を最大限に活用し、さらにまた、同社特有のレポート生成要件にも対処しています。
業界の主導的地位を将来にわたって維持するため、Bosch社では、現在、各種のガソリン直噴(GDI)装置の開発を推し進めています。これらのガソリン噴射装置は、燃焼室内に燃料を直接噴射するための高圧バルブで動作します。そのプログラム制御のマイクロプロセッサによって、各燃焼サイクルが精密に計算され、刻々と変化する運転条件やドライバーの特性に応じて的確に調整が行われます。計算能力が高まったことにより、エンジニアは、ノック制御、ターボチャージャーの過給圧制御、スロットルバルブの作動、スピード制御など、これまで以上にエンジン管理機能を統合することが可能になりました。加えて、燃料層状噴射(FSI)のように多孔ノズルを持った先進の噴射装置などがエンジン性能をさらに向上させています。全体的に見ても、これらの最新の噴射装置は車を運転する楽しみを増し、燃料消費量と二酸化炭素排出量を削減するなど、様々な面でメリットがあります。

新世代のGDIシステムは、基本的な機械要素として、高圧ポンプ(HDP5)、高圧インジェクタ(HDEV4/5)、および高圧燃料レールで構成されています。これらパーツの最適な耐久性能を実現するには、過剰設計に陥ることなく、安全確実なコンポーネントやシステムを設計することが要求されます。材料の静的な破損強度を十分下回る程度の荷重であっても、負荷サイクルが繰り返しパーツに作用すると、材料が損傷を受けたり最終的にき裂が発生したりする可能性があります。また、耐久性エンジニアリングが不適切であると、パーツの重量やコストが増大します。インジェクタ、ポンプ、レール、バルブ、スロットル装置など、燃料噴射装置を構成するすべてのパーツは、長時間続く過度なレベルの振動にも耐えなければなりません。また、それらのいくつかは、刻々と変化する過酷な圧力条件や気象条件にも耐えなければいけません。従ってBosch社は、その全ライフサイクルを通して完全に動作することを確認するため、過酷な運用試験や認定試験を行っているのです。

90年代初めには既に、Bosch社はLMS CADA-XとHPParagonシステムを用いて、燃料噴射装置の実稼働耐久試験と認定試験を実施していました。典型的な試験環境は、気候室内の加振器に噴射装置が固定され、高温高圧下でインジェクタにガソリンを供給しながら、構造上の数点で振動レベルが測定されるものでした。最近になってBosch社は、投資拡大戦略の一環として、ドイツ国内の複数地点にある環境試験用のソフトウェアとハードウェアをすべて置き換えました。その理由は、10年を過ぎた試験装置の老朽化にありました。装置はまだ問題なく稼働していましたが、維持費の増大とHP Paragonの校正サービス廃止が近づいていることが交換を促しました。

新しい環境試験システムは、LMS SCADAS 310および316フロントエンドハードウェアと、自動車試験用のLMS Test.Labソフトウェアで構成されており、これにはランダム振動制御、正弦波制御、正弦波ドゥエル、サイン-オン-ランダム制御の機能が含まれています。従来のシステムにあった機能に加えて、Bosch社にある4つのシステムのそれぞれは、サイン-オン-ランダム加振スケジュールの制御も可能になっています。この点は特に重要です。なぜならサイン-オン-ランダム試験に対する要求は増えつつあり、関連のISO規定も進行中だからです。供試体が大型でチャンネル数が膨大になる航空宇宙産業と違って、自動車業界では8チャンネルの試験環境が最もよく用いられます。これらチャンネルのそれぞれは、測定チャンネルとしても振動制御チャンネルとしても自由に割り当てることができます。 LANネットワークによって、様々な場所に分散した試験装置から測定データを収集したり、このような大量の情報をネットワークの中枢に保存したりできるので、プロジェクト志向のアプローチを守りながら、安全にデータを管理することができます。
Bosch社における環境試験の測定シーケンスは、連続した3回のステップで行われます。それぞれは特定の方向(3つの直交軸)における測定です。まず、後で実施される認定試験の基準となる初期測定が行われます。続いて、供試体に対して厳しい耐久試験が実施されます。この試験では、個々のインジェクタやアセンブリ(例えば、インジェクタレールと制御ユニットを含んだ吸気マニホールド)が、振動(加振器)と熱(気候室)そして稼働時の各負荷を同時に与えて徹底した試験が行われます。このように、Bosch社の広範囲に渡る耐久試験には、稼働時と非稼働時の両方の耐久試験が含まれています。フル稼働時の試験では、特に燃料漏れの恐れがある場合、重大な火災の危険性さえ抱えています。
Bosch社のエンジニアはまた、燃料レールのアセンブリに対して耐久加振試験を行い、曲げモードの応力が損傷を引き起こす恐れがないか調べたり、ドゥエル試験を実施してき裂が発生しないか確認したりしています。

これらの耐久試験の後、再び振動評価試験が実施されます。この試験は、基準となる初期測定と全く同じ方法で行われます。基準となる初期測定と最終測定が異なる結果を示した場合、耐久試験の結果、部品の1つまたは複数に疲労が生じていることになります。そのような場合、最も損傷した部品を特定し、それらの耐久性がどの程度まで影響を受けたか追跡するため、さらなる試験が必要になります。場合によっては、部品が破壊した時期を正確に調べるため、破壊試験が実施されます。
試験における柔軟性はBosch社にとって特に重要です。なぜなら、自動車メーカーは特定の試験要件を指示してくるからです。それらは、多少その会社独自の試験法であったり経験に基づいたものであったりします。Bosch社のエンジニアが最初に行う仕事は、要求された性能仕様の目的に合うように試験方法を調整することです。試験方法の調整には、試験タイプ、試験荷重、試験プロファイル、そして試験の継続時間などの仕様が関係します。Bosch社は、その高圧燃料噴射装置の品質を保証し、部品メーカーとしての任務に対して全責任を負うことを強く確約しているため、GDIが計画通り動作することを確認するためには変更された試験や追加の試験を実施することも厭いません。Bosch社はさらに、その長年に渡って蓄積した専門技術を活かして、 新開発の部品やアセンブリが従うべきBosch独自の内部仕様をさらに微調整するため、特定の車両の測定結果を利用しています。