Alenia Spazio 社は、有人宇宙飛行船内の非常に厳しい微小重力条件と振動音響の環境条件を完全に満たす、実験とシミュレーションを一体化した新しい設計プロセスの開発に成功しました。宇宙船内では、船内空調システムや電力システムから誘発される振動騒音のレベルが、科学実験を妨げたり、宇宙飛行士に聴覚障害

を引き起こしたりする可能性を持っています。それらの設計・開発プロセスの一環として、Alenia Spazio社は宇宙システムの125 ヘルツまでの振動音響性能を予測するためLMS SYSNOISE を使用しています。Alenia Spazio 社の献身的な開発活動とその工業分野への応用(例えば、MPLM、ノード2、コロンバスなどのISS モジュール)で得た豊富なノウハウは、同社を微小重力と振動音響関連の設計プロセスにおいて確固たるリーダーの地位に引き上げました。そして昨年の12 月、19 トンのコロンバス実験モジュールを搭載した飛行モデルは、独ブレーメンのEADS 社で実施された振動音響および微小重力の認定試験に無事合格しました。
Alenia Spazio 社は、国際的な宇宙開発/ 統合プロジェクトに幅広く参画しているイタリアの大手宇宙メーカーで

す。電気通信の分野でも、同社はGlobalstar 社の衛星電話向け通信衛星をすべて統括し、欧州の衛星ナビゲーションシステム「Galileo」の策定にも参加してきました。また、合成開口レーダーとマイクロ波センサーの大手建設会社として、Alenia Spazio 社はエンビサット衛星その他の多くの宇宙ミッションの成功にも貢献してきました。国際宇宙ステーション(ISS)計画においては、大型加圧容器の設計製造を受け持つとともに、打ち上げ、輸送、帰還システムの開発にもかかわっています。それ以外にも同社は、数多くの科学衛星ミッションの実現に貢献し、ロゼッタ探査機とマーズ・エクスプレスの両プロジェクトにも深くかかわってきました。
まったく新しい革新的な手法
宇宙空間では、電気機器、熱機器、環境機器、オーディオ/ ビデオ機器などの動作音は、宇宙飛行士にとって非常に騒がしく不快に感じられます。なぜなら、空気の欠如によって騒音放射量は減衰することがないためです。快適性の問題以外では、宇宙探査機に搭載された科学機器による実験には、しばしば極端な微小重力状態が必要となるという問題があります。このような厳しい条件を満たすには、音圧レベルに基づく従来からのアプローチではもう限界です。それらのアプローチには、通常、熱機械システムを物理的に精度良く表現する能力が欠けており、船内の構造的そして振動音響的な相互関係を正確に分析することもできません。
そこでAlenia Spazio 社は新しい手法の開発に取り組み、最初にEADS 社およびESA と協力して策定した概念設計の検証戦略に対して適用してみました。彼らが考え出した手法は、サブシステムメーカーから得たデータと宇宙探査機自身の構造的および振動音響的な伝達特性を用いて、寄与度ファクタの枠組みを調整して配分するというものです。
Alenia 社のエンジニアは、このアプローチを全体システムの微小重力環境と可聴ノイズ環境に適用したほか、特定された個々の振動騒音源にも適用しました。一連のシミュレーションと実験のサイクルを繰り返しながら寄与度ファクタを割り当て定量化し更新していくことは、モジュールの設計を検証する上で有効な方法と言えます。すべての振動騒音源を有効にした場合、Alenia Spazio 社では仮想の二乗和平均(RSS)評価を実施して微小重力環境を査定するとともに、一方で音響パワーモデルを用いて音響環境のシミュレーションを実施することにしています。
使用された数学モデルは、システムの構造的および振動音響的な伝達特性はもちろんのこと、モジュールで経験する微小重力環境と可聴ノイズ/ 体感振動の環境さえ再現することが可能です。どちらのシミュレーション評価も、振動騒音源と構造ハードウェアのレベルで適切な設計変更を加えることを可能にするものであり、モジュールの設計を最適化する上で欠かせないものです。評価すべき周波数レンジが広いことと、高い周波数においてモードが密集していることから、Alenia 社は2 つの異なるモデリング法を採用することにしました。125 ヘルツまでの周波数レンジではLMS SYSNOISE の確定的有限要素および境界要素モデリング(FEM/BEM モデリング)法が用いられ、125 ~ 8000ヘルツ(どちらもオクターブパスバンドでの値)の周波数レンジでは統計的エネルギー解析(SEA)のモデリング法が用いられました。
実行に移された手法
Alenia 社が初めてこの設計手法を展開したのは、1980 年代後期にイタリア宇宙機関(ASI)によるMPLM プロジェクトにおいて振動音響性能を最適化しようとしていたときでした。MPLM は、スペースシャトルに乗せて国際宇宙ステーションへ補給品を繰り返し運ぶための輸送用モジュールです。このプロジェクトにおけるAlenia Spazio 社の成功は、新しく導入された手法が大きな潜在力を秘めていることを明白に暗示するものでした。それを受けて、Alenia Spazio 社は、予圧モジュールに関連した構造的、振動- 音響的伝達特性の検討において、そのシミュレーション能力と試験戦略のさらなる開発と最適化を進めることを決定しました。
次のプロジェクトは1996 年に開始され、「コロンバス軌道上研究室(COF)」の設計をもとに、半分短く改造された「スペースラブ」モジュールに対して適用されました。Alenia Spazio社で振動音響と微小重力を担当するPietro-Carlo Marucchi-Chierro 氏は次のように説明しています。「我々は、スペースラブのモジュール内に、円筒容器、前方円錐形のダミーラック、エアロック、そしてベントプレートで構成された、閉ざされた内部音響空洞を作成しました。円筒容器内にダミーのラックを置き、実際と同じ条件となるようラックと容器の機械的干渉とエネルギー伝達経路を与えました。そして、LMSSYSNOISE による解析と実測データを組み合わせて、対話形式の処理を進めました。このFEM モデルによって、流体と構造の相互作用、構造モードと音響モード、そしてエネルギーの伝達特性を精度良くシミュレーションすることができました。」

構造試験とモーダル検証試験の実施に先だって、Alenia 社の実験エンジニアは予備試験を行い、低周波と高周波の両方の測定にとって最適なトランスデューサの計装化プランを立てました。彼らはまた、周囲の振動騒音レベルと加振源、バルーン、および音響パワー源から引き起こされるレベルとの差が10dBとなるよう、さまざまな加振パターンを試しました。Pietro-Carlo Marucchi-Chierro 氏は次のように締めくくっています。「シミュレーションと実測で得られた伝達関数は互いに高い相関性を示すものでした。これは、誘導される微小重力、軌道上環境、そして振動- 音響伝達経路を定める上で、LMSSYSNOISE の機能と理論的仮定が大いに信頼できるものであることを証明していました。」
工業分野での立証